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【2026年10月開始】高齢者インフルエンザワクチン「エフルエルダ筋注」が75歳以上の定期接種に

[2026.07.19]

2026年10月から、高齢者向け高用量インフルエンザワクチン「エフルエルダ®筋注」が、75歳以上を対象とした定期接種に新たに組み込まれることになりました。高用量インフルエンザHAワクチン「エフルエルダ®筋注」について、2026年10月1日より75歳以上を対象とした定期接種として実施される方針が厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会)にて了承されています。 Sanofi

エフルエルダの特徴

エフルエルダは、サノフィ社が製造販売する高齢者向けの高用量4価不活化インフルエンザワクチンです。2024年12月27日に製造販売承認されたこのワクチンは、1シリンジ(0.7mL)中にインフルエンザウイルス(A型・B型)のHA抗原量を1株あたり60μg含有しており、適応は「インフルエンザの予防」、用法用量は「60歳以上の者に1回、0.7mLを筋肉内接種する」となっています。 Medical Nikkei

これまでのインフルエンザワクチンと異なる特徴は以下2点です。

  • 抗原量が標準用量の4倍:通常の4価インフルエンザHAワクチンは1株あたり15μg(合計60μg)ですが、エフルエルダはA型株2種・B型株2種のHAをそれぞれ60μg、合計240μgを含有します。
  • 投与経路が筋肉内注射:日本の従来のインフルエンザワクチンは皮下注射ですが、エフルエルダは筋肉内接種です。

加齢に伴う免疫老化により、高齢者では標準用量ワクチンでは十分な抗体応答が得られにくいことがあります。抗原量を増やすことでこの反応の低下を補い、より強い液性免疫応答を引き出すことを狙った設計になっています。

定期接種の対象者

2026年10月以降の位置づけを整理すると、次のようになります。

年齢層

位置づけ

75歳以上

定期接種(公費対象) ※2026年10月開始予定

60〜74歳

任意接種(自費)で接種可能

60歳未満

適応外(対象外)

定期接種(公費)の対象は75歳以上で、2026年10月からの予定です。60〜74歳は接種そのものは受けられますが任意接種(自費)扱いとなり、60歳未満は対象外です。なお、定期接種の対象年齢は75歳以上に限定されるものの、60歳以上75歳未満の年齢層においてもインフルエンザの疾病負荷やエフルエルダの科学的エビデンスは報告されており、サノフィは60歳以上のすべての方がアクセス制限を受けないよう取り組みを進める方針を示しています。自治体によって助成の有無や自己負担額は異なるため、窓口での確認が必要です。

 

有効性データ:FLUNITY-HD試験

FLUNITY-HDは、65歳以上の被験者延べ46万6,320人を対象にデンマークとスペインで実施された2つの実用的な個別無作為化比較試験(DANFLU-2、GALFLU)を、事前に規定した計画に基づき統合解析したものです。DANFLUで332,438名、GALFLUで133,881名という大規模な組み入れが行われました。 SanofiKansensho

主な結果は以下の通りです。

  • 主要評価項目:インフルエンザまたは肺炎による入院を、高用量群は標準用量群と比較して8.8%抑制しました。
  • 副次評価項目:心肺疾患による入院を追加で6.3%低下させました。また心呼吸器系疾患による入院、検査で確定したインフルエンザによる入院、全入院についても有意に減少させました。
  • 安全性:重篤な有害事象の発症については両群間で差を認めませんでした。
  • サブグループ解析:FLUNITY-HDとしての統合解析と各試験個別の解析において、サブグループ間での有用性に関する異質性は認められず、相対的効果量は背景のリスク因子の有無にかかわらず一貫していました(Johansen ND, et al. Lancet. 2025;406(10518):2425-2434)。

一方、日本人での免疫原性データとしては、国内第3相QHD00010試験において、エフルエルダは国内既承認の標準用量ワクチンに比べ優れた免疫応答を誘導し、主要目的である4種類のウイルス株すべてに対する幾何平均抗体価(GMT)比および抗体陽転率について優越性が示され、忍容性も良好でした。さらに海外の先行データとして、65歳以上を対象とした海外大規模試験(DiazGranados CA, et al. N Engl J Med. 2014;371(7):635-645)では、標準量ワクチンに比べ検査確定インフルエンザ発症率が1.89%から1.43%に低下し、相対的有効性は24.24%でした。

海外での導入状況

日本では今回定期接種化が決まりましたが、海外ではすでに広く使われています。

エフルエルダは世界25カ国以上で発売されており、米国・英国では65歳以上、ドイツでは60歳以上に高用量インフルエンザワクチンの使用が推奨されています。欧州では60歳以上の成人を適応とし、北米ではFluzone High-Doseの商標名で65歳以上の成人を適応として承認されています。 SanofiSanofi

米国では、Fluzone High-Doseは標準用量ワクチンの4倍の抗原量を含み、65歳以上を対象に承認されている3種類のワクチン(Flublok、Fluadとともに)の一つとして65歳以上への優先的な使用が推奨されています。承認自体は決して最近の話ではなく、3価のFluzone High-Doseは2009年にFDAで承認されており、その後4価製剤(Fluzone High-Dose Quadrivalent)としても承認が拡大されました。介護施設入居高齢者を対象とした大規模試験でも、高用量ワクチン群はインフルエンザ関連呼吸器疾患・入院を標準量群より抑制したとする報告があります(Gravenstein et al. Lancet Respir Med 2017)。

つまり日本は、海外で10年以上の使用実績が積み上がった後に定期接種として導入する形になります。

筋肉注射、皮下注射との免疫学的な違い

日本のワクチン接種は歴史的経緯から皮下注射が主流でした。1970年代に抗生剤や解熱剤を筋肉に大量・頻回注射したことで大腿四頭筋拘縮症が社会問題となり、それ以降予防接種は皮下注射で行われるようになったという背景があります。しかし日本以外の国では予防接種はほとんど筋肉注射で行われており、皮下注射で行っているのは日本だけという状況です。2000年代以降に登場した子宮頸がんワクチン、新型コロナワクチン、帯状疱疹ワクチンはいずれも筋肉注射です。

免疫学的な観点から見ると、筋肉組織は皮下脂肪組織に比べて血流が豊富で、抗原提示を担う樹状細胞などの免疫担当細胞の密度も高いことが知られています。この違いが、抗体産生や局所反応の差につながると考えられています。実際、筋肉注射は皮下注射に比べて血管が豊富な筋肉組織に薬液が入るため吸収が早く、注射後の局所の腫れや炎症も長引きにくく、抗体産生も皮下注射より優れているとされ、ワクチン本来の目的を達するためには筋肉注射の方が有利とされています。また不活化ワクチンでは一般に筋肉注射が推奨され、皮下注射よりも筋肉注射の方が腫れにくく、免疫原性は同等かそれ以上とされています。

さらに筋肉内は薬液の吸収が速く、皮下接種に比較して局所反応(穿刺部の腫れ・痛み)が少ないという報告もあり、海外では生ワクチンを除く多くのワクチンが筋肉接種で行われています。

エフルエルダが高抗原量に加えて筋肉注射を選択している背景には、筋組織における樹状細胞をはじめとする抗原提示細胞の豊富さを活かし、抗原量の増加効果を最大限に免疫応答へつなげるというコンセプトがあると理解され、単に「量を増やしただけ」のワクチンではないと考えられます。

副反応について

高用量・筋注において、局所反応はある程度出ます。副作用としては標準ワクチンと共通するものが中心ですが、接種部位の疼痛、倦怠感・頭痛・筋肉痛なども見られます。ただしこれらは一時的なもので、多くは1〜2日で自然に改善するとされています。重篤な副反応の頻度自体は標準用量ワクチンと大きな差はないと報告されています。

まとめ

  • エフルエルダは標準用量の4倍のHA抗原量を持つ高用量4価インフルエンザワクチンで、2026年10月から75歳以上を対象に定期接種化される予定
  • 60〜74歳は任意接種、60歳未満は対象外
  • 有効性の裏付けは、国内第3相試験(免疫原性の優越性)と海外FLUNITY-HD試験(入院抑制効果)の2段階のエビデンスで構成される
  • 海外では25カ国以上で発売済みで、米国・英国は65歳以上、ドイツは60歳以上に推奨と、日本より先行して定着している
  • 接種経路は筋肉注射で、樹状細胞をはじめ免疫担当細胞が豊富な筋組織の特性を活かし、皮下注射より高い免疫応答が期待される
  • 局所反応(疼痛など)はやや高率だが、多くは一過性

当院でも2026年秋シーズンに向けて、対象となる患者さんへのご案内を順次進めてまいります。郡山市での接種費用などわかり次第お知らせしたいと思います。

本記事は2026年7月時点の公開情報(サノフィ株式会社製品情報、添付文書、厚生労働省・厚生科学審議会資料、日本感染症学会ガイドライン、The Lancet掲載論文等)に基づいています。定期接種の詳細(開始時期・費用負担等)は自治体の発表により変更される可能性があるため、最新情報は自治体・窓口でご確認ください。

 

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(追記)ブログ公開後新たな情報で、エルフエルダは発売時期が延期され、今年の定期接種には間に合わないようです。

 

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