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夏に急増する尿路結石——その予防法について

[2026.06.20]

「あの痛みはもう二度と経験したくない」——尿路結石を経験した患者さんからよくこんな言葉をお聞きします。突然始まる脇腹から下腹部にかけての激烈な痛みは、「人生最大の痛み」と表現されることも珍しくありません。

これから気温が高くなる季節、尿路結石の患者さんは増えてきます。今回は帝京大学ちば総合医療センター・若井健先生の講演内容をもとに、結石の成因から科学的な予防法についてまとめてみました。

 

  1. 男性の7人に1人がかかる——尿路結石の現状

尿路結石は決して珍しい病気ではなく、生涯を通じて一度はかかるリスクは、男性で約15%、女性で6〜7%とされています。また年間罹患率は1965年から2005年の間に約3倍に増加しました。原因としては食生活の変化などが推察されます。また近年では地球温暖化も進んでおり、今後もっと結石患者が増えていくかもしれません。

 

▼ 罹患リスク

・男性の生涯罹患リスク:15%(約7人に1人)

・女性の生涯罹患リスク:6〜7%(約15人に1人)

・国内の年間医療費:572億円

 

結石患者は一般の方と比べてQOL(生活の質)が低下しやすく、慢性腎臓病(CKD)への進展リスクも高まることが知られています。

 

  1. なぜ夏に多いのか? 結石ができるメカニズム

 

結石ができる基本的なメカニズムは「尿の過飽和」です。カルシウムやシュウ酸、尿酸などの成分が尿に溶けきれなくなった状態が続くと、結晶が析出し、やがて石になります。

砂糖水に砂糖を入れすぎると溶けきれずに底に沈むように、尿中の成分が濃くなりすぎると石の核ができます。夏は発汗で尿量が減り、濃度が上がるため結石が増えるのです。

 

▼ 結石を作りやすくする因子

・カルシウム過剰排泄

・シュウ酸(尿中)の増加

・尿酸の増加

・尿量の減少(脱水)

・尿pHの異常(酸性・アルカリ性)となります。

逆に

 

▼ 結石をできにくくする因子は

・十分な尿量(2L以上/日)

・クエン酸(柑橘類・野菜)

・マグネシウム

・適切なカルシウム摂取

・適切な尿pH管理です

 

【メタボリックシンドロームに注意】

メタボリックシンドロームがある方は、結石リスクが2〜3倍高くなります。インスリン抵抗性が尿を酸性化し、クエン酸排泄が減少することで、尿酸結石やシュウ酸カルシウム結石が両方増加します。体重を5〜10%減らすだけで結石リスクが有意に低下することが示されています。

 

 

  1. 10年で3人に1人が再発

 

ROKS study(初発結石患者2,239名を最大15年追跡した大規模研究)によると、再発率は次のように推移します。

 

・2年後:11%

・5年後:20%

・10年後:31%(約3人に1人)

・15年後:39%

 

出典:ROKS study(J Am Soc Nephrol. 2014;25(12):2878-86)

 

10年で約3人に1人が再発しますが、適切な生活習慣の改善と、必要に応じた薬物療法で、この再発率は大きく下げられます。

 

 

  1. 最大の予防策は「水分摂取」

 

結石予防でまず取り組むべきは、シンプルですが最も効果が大きい「水分摂取」です。300人を対象にした5年間のランダム化比較試験では、水分摂取だけの介入(食事指導なし)で、再発率が27%から12%へと半減したと報告されています。

 

【目標:尿量2〜2.5L/日】

これを達成するには、飲水量として1日約2.5〜3Lが必要です。夏場や運動時はさらに増やしましょう。「喉が渇いてから飲む」ではなく、こまめな水分補給が大切とされています。ただこの飲水量は結構多いかなと思います。

 

▼ 効果的な飲水のタイミング(例)

・起床直後:コップ1杯(200ml)→ 夜間の濃縮尿を薄める

・食事ごとに:コップ2杯(400ml)X3 =1200ml→ 食後の尿酸・カルシウム上昇を希釈

・間食時:コップ1杯(200ml)→ 日中の尿量を確保

・就寝前:コップ1杯(200ml)→ 夜間の過飽和を防ぐ

ここまでで1800mlです。大体はこのくらいでも多めかと思われます。加えて

・運動前後:各コップ1〜2杯 → 発汗による濃縮を補正

 

▼ 推奨する飲み物

・水(最も推奨)

・無糖の麦茶・緑茶

・コーヒー・紅茶(適量)

・レモン水(クエン酸補給)

 

▼ 避けてほしい飲み物

・砂糖入り清涼飲料水

・スポーツドリンク(過剰摂取)

・フルーツジュース(果糖過多)

・アルコール(利尿作用で脱水)

 

自分の尿量が足りているかの簡単な目安:尿の色が透明~薄黄色なら十分とれてると思われます。濃い黄色や茶色は水分不足、濃い尿になってます。

 

 

  1. 食事で変わる尿の質

 

◎ ① 減塩:意外に重要

 

「結石と塩分」は深い関係があります。食塩を多く摂ると尿中のカルシウム排泄が増加し、同時に結石抑制物質であるクエン酸の排泄が減少します。日本人の平均食塩摂取量は約10g/日ですが、目標は6g/日未満です。

 

【減塩の実践ポイント】

・調味料は計量スプーンで管理

・出汁・香辛料で塩分を補う

・加工食品・漬物を控える

・ラーメン・うどんの汁は残す

 

◎ ② カルシウムは「制限してはいけない」——カルシウムパラドックス

 

「カルシウムが結石の成分なら、制限すれば良いのでは?」というのは間違いです。食事から適切にカルシウムを摂ると、腸の中でシュウ酸と結合し、シュウ酸の吸収が抑えられます。結果として尿中のシュウ酸が減り、結石予防になります。

 

【カルシウムの目標摂取量:700〜1,000mg/日】

・牛乳200ml = 約200mg

・ヨーグルト100g = 約100mg

・小魚・大豆製品も有効

食事と同時に摂ることが重要です。サプリメントのみの摂取はリスクを上げる場合があるため注意が必要です。

 

◎ ③ 動物性タンパク質は適量に

 

赤身肉や臓物を多く食べると、尿酸産生が増え、尿が酸性化し、尿中カルシウムが増え、クエン酸が減ります。その結果結石促進因子を複合的に増やしてしまいます。目安は体重1kgあたり0.8〜1.0g/日。魚・鶏肉・大豆製品を積極的に取り入れるようにするとよいでしょう。

 

◎ ④ シュウ酸の多い食品はカルシウムと一緒に食べる

シュウ酸は結石の主成分となります。

・ほうれん草・たけのこ・しいたけ → 茹でこぼすと大幅に減少

・ナッツ類(特にアーモンド) → 少量にとどめる

・紅茶・コーヒー(濃いもの) → 1日2〜3杯程度に

・チョコレート → 過剰摂取を避ける

 

過度な制限は不要ですが、食事の際にカルシウム(牛乳・ヨーグルト等)と一緒に食べることでシュウ酸の吸収を抑えられます。

 

◎ ⑤ DASH食が結石予防にも有効

 

野菜・果物・低脂肪乳製品を中心とした「DASH食」は、もともと高血圧治療のために開発された食事スタイルですが、尿中クエン酸を増やし、カルシウム排泄を減らすことで、結石リスクを下げることも示されています(J Am Soc Nephrol 2009)。血圧管理と結石予防を同時に達成できます。

 

 

・結石予防には

 

▼ 4ステップ

STEP 1:水を飲む → 目標尿量2〜2.5L/日。夏は意識的に増やす

STEP 2:塩分を減らす → 目標6g/日未満。加工食品に注意

STEP 3:食事を整える → Ca適正摂取し、動物性蛋白は控えめに

STEP 4:専門医を受診 → 再発・尿異常は薬物療法も検討。

 

 

【尿管結石の症状がある方はすぐ受診を】

・脇腹〜下腹部の激しい痛み:基本的に結石のある側右か左の側腹部~背部の強い痛みが来ます

・血尿 痛みとともに血尿になることがあります。結石が腎臓~尿管内で動いている証拠です。

 

当院を受診された場合、尿検査・超音波検査、レントゲンなどによる結石の検査から、再発リスクの評価、生活指導、薬物療法(クエン酸製剤など)まで、尿路結石の管理を行っています。検査上、自力で排石できなさそうな大きさの結石の場合は、郡山駅周辺の寿泉堂総合病院や星総合病院の泌尿器科に紹介し砕石していただいています。どちらも私の福島医大の同僚(先輩・後輩)の結石手術を得意とする信頼できる医師がおります。「石が出た」「健診で指摘された」「結石を繰り返している」「石が出た」という方は、ご相談ください。

 

 

▼ 参考・出典

  1. 若井健「尿路結石症どう予防する?―もう一度成因から考える―」日本泌尿器科学会総会
  2. 日本泌尿器科学会ほか「尿路結石症診療ガイドライン 第3版(2023年版)」医学図書出版
  3. Rule AD et al. ROKS nomogram for predicting a second symptomatic stone episode. J Am Soc Nephrol. 2014;25(12):2878-86.
  4. Borghi L et al. Urinary volume, water and recurrences in idiopathic calcium nephrolithiasis. J Urol. 1996;155(3):839-43.
  5. Taylor EN et al. DASH-style diet associates with reduced risk for kidney stones. J Am Soc Nephrol. 2009;20(10):2253-9.

 

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