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院長ブログ

東京五輪直前デルタ株の拡大、現行ワクチン推進(2021.07.18更新)

もうすぐ東京五輪となりますが、新型コロナウイルスのパンデミックのおかげで今ひとつ盛り上がりにかけているかも知れません。五輪会場では、観客を入れるか入れないかが議論されていましたが、それ以前に心配なのは、五輪のために日本に入国する外国人の行動を銅管理するかの所が心配です。先日も五輪代表候補だった外国人が失踪する事象が有りました。万一、こういう人がウイルス陽性だったりしたらと考えたら、五輪で入国する人達には申し訳ないけれど、ウイルス検査はもちろん行動範囲は十分制限して欲しいと感じてしまいます。最近でも、特に東京での感染拡大も心配で、特にデルタ株には注意が必要でしょう。

 

デルタ株の変異ですが、L452R変異を持つ株で、スパイク蛋白の構成アミノ酸で452番目のアミノ酸がL=ロイシンがR=アルギニンに変わっている株と言う意味です。ロイシンがアミノ酸に変わると、ロイシンは疎水性=水をはじくアミノ酸が、アルギニン=親水性のアミノ酸に変化しますので、アミノ酸が折りたたまってできる蛋白質の形が変わってしまいます。このデルタ株では感染力が強いことと、免疫力低下に関与している可能性が指摘されています。

 

感染力が強いことは、以前アルファ株(旧イギリス型)が出現したときにも見られましたが、あっという間に拡散していってしまいます。実際米国でも、以前のアルファ株が徐々にデルタ株におきかわってきています。

https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#variant-proportions

 

また、感染力のみならず、免疫に関わる気になる論文も出てきています。これは日本からの論文ですが、デルタ株L452R変異を持っている株はHLA-A24による細胞性免疫から逃避するという論文です。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34171266/

特に、報道ではこのHLA-A24は日本人の6割が持っているので要注意というのも有りました。ただ、報道記事だけで理解するには少し難しい所です。

 

まず、ウイルス感染に対する免疫ですが、大きく分けると

1)液性免疫

2)細胞性免疫

に分けられます。ウイルス感染に対抗するには双方が重要となります。

1)液性免疫は簡単に言うと抗体による免疫です。抗体(中和抗体)はワクチンで誘導することができ、中和抗体が存在するとウイルスが細胞に感染するのを防ぐ事が可能になります。ただ、実際は抗体だけだと不十分で、強い抗ウイルス免疫には2)細胞性免疫も必要になってきます。

2)細胞性免疫は細胞障害性T細胞という免疫細胞が、ウイルスが入り込んでしまった感染細胞を破壊する事です。ウイルス感染細胞を破壊する事で、細胞からのウイルス放出を抑制します。この細胞性免疫は、たとえばインフルエンザウイルスに対して行っている、いわゆる不活化ワクチンでは細胞性免疫は誘導されません。細胞性免疫まで誘導されるのはまずは弱毒生ワクチンで、麻疹や風疹のワクチンなどがそれにあたります。そして、新型コロナウイルスワクチンに使われるRNAワクチンも細胞性免疫を誘導することが可能です。

 

細胞性免疫についてですが、元々我々の体を作っている細胞は全て1つの受精卵からスタートして、前部の細胞が同じ遺伝情報を持っています。そして全ての細胞が「自己」である証拠となる蛋白を細胞表面に発現しています。これが「ヒト白血球抗原(HLA)」です。白血球と書きますが、一方ではMHCとも言われ、全ての細胞が発現しています。ただ、このHLAは非常に多くのタイプが存在します。

http://hla.alleles.org/antigens/recognised_serology.html

 

そして、私たちの免疫は、この「自己」ではない細胞を排除します。HLAが適合していない臓器移植では拒絶反応がおきますが、これは免疫細胞が「自己」ではない臓器の細胞を免疫細胞が攻撃して行くからです。そして「自己」であるかどうかはHLAが「自己」の細胞であるか=HLAが一致しているかどうかと言う事です。

 

となると、ウイルス感染細胞についてですが、ウイルスが感染したとしてもその細胞はもちろん「自己」の細胞であることは当然です。しかしこのHLAですが、細胞の内部で「自己」の持っていない蛋白が合成されたとき(たとえばウイルスが感染したときなど)にはこのHLAの蛋白の上に、その「自己」ではない蛋白をのせてしまいます。つまりHLAに他の蛋白がプラスされた事になって、見た目HLAはこれまでの「自己」のHLAと違う形になるわけです。この他の蛋白を載せたHLAを持った細胞は「自己」ではないと判断され免疫細胞、細胞障害性T細胞に破壊されるわけです。

 

すると、先の日本の論文ですが、簡単に言うと、HLA-A24はL452R変異を持っている株の蛋白を、HLA-A24の上に載せにくいと言う事だと考えます。HLAの上にウイルス蛋白を載せると言うのは「抗原提示」とも言いますが、免疫細胞に「今、こういう異質のものが入ってきています!」という指令になりますので、抗原提示がされないと、細胞性免疫が動かないと言うことになります。

報道などではこのHLA-A24は日本人の6割が持っていますとされていますが、日本人の6割が細胞性免疫が低くなると言う訳ではないように思われます。HLA-A遺伝子も父親、母親から一個ずつもらいますので、どちらかがA24であるのが6割ですので、たとえば片方からでももらっている人を含めて6割でしょう。こういった基礎研究は重要ですが、一喜一憂する必要は無いと思います。

 

現行のワクチン、RNAワクチンは、スパイク蛋白のmRNAが筋肉細胞内に入り、細胞質で直ちにスパイクタンパク質を作り、そのタンパク質は、細胞内の酵素でプロセッシングを受け、MHCクラスI=HLAに提示されます。つまり、細胞性免疫が活性化されるというワクチンです。

 

報道によれば、9月末までに接種対象となる日本国民の「2億2000万回分を確保している」となっていました。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20210717-OYT1T50132/

 

12歳以上の人が、一人2回打つとして、十分な量なのでしょう。いまは、現行ワクチン接種を進めていくのが重要かと思われます。

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