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院長ブログ

オミクロン株:今後の脅威となるか(2021.11.29更新)

南アフリカをはじめ、各国で新たな変異株、オミクロン株が検出されてきています。この株はスパイク蛋白の遺伝子にこれまでより多くの変異を持っていることが特徴です。WHOはこのオミクロン株を「懸念される変異株」(VOC)に指定しました。

https://www.bbc.com/japanese/59441279

 

BBCの記事にも出ていますが、このウイルスはRNAウイルスであり、変異が入りやすいこともありますが、ウイルスの変異は感染した人の細胞でウイルスが増殖する際に生じます。つまりこういった変異は感染を繰り返す機会が多いほど変異が生じやすいと言うこととなります。そういう目で見てみると、南アフリカにおけるワクチン接種完了率は現在でも24%です。日本の77%と比較するとかなり低いです。今の新型コロナウイルスに対して集団免疫が達成されるのは75~85%ほどのようです。日本はクリアしているから現在の感染率ですんでいるのでしょう。しかし、南アフリカの接種完了率はそれにほど遠く、変異株が生じる素地があったと考えられます。  

 

このオミクロン株における変異については、国立感染症研究所のHPに要約されています。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10792-cepr-b11529-2.html

 

国立感染症研究所によると、オミクロン株は基準株と比較して、スパイクタンパク質に30か所のアミノ酸変異を持っていて、このうち15か所の変異は受容体結合部位(Receptor binding protein; RBD; residues 319-541)に存在するとのことです。受容体結合部位の変異ですが、この変異が受容体への結合率を上げるのか、中和抗体の結合に変化をもたらさないかは今後の研究待ちでしょう。

その他、H655Y、N679K、P681HはS1/S2フリン開裂部位近傍の変異であり、細胞への侵入しやすさに関連する可能性があり、nsp6における105-107欠失は免疫逃避に寄与する可能性や感染・伝播性を高める可能性が、そしてヌクレオカプシドタンパク質におけるR203K、G204R変異は感染・伝播性を高める可能性があるとしています。

アミノ酸の変異は蛋白質の形を変えてしまいますので、その性質も変わる可能性があるとは考えても良いと思います。

 

スパイク蛋白の変異がもたらす影響として最も考え得る危険性が中和抗体の効果でしょう。ワクチンで誘導される中和抗体はウイルスのスパイク蛋白に結合することで、ウイルスが細胞の受容体ACE2に結合するのを防ぎますが、抗体が結合できなければ感染を防ぐことができなくなります。いま世界が心配しているのはその点だと思われます。

一方、今回のmRNAワクチンで誘導される物に細胞性免疫が有ります。細胞性免疫は細胞障害性T細胞がウイルス感染細胞を見つけ出し細胞を殺すことができます。ウイルスは感染細胞から作られるので、感染細胞に対する免疫反応は重要です。感染細胞は、細胞上のMHCクラスIにのるペプチドで認識されます。そのペプチドは、ウイルスのどこの蛋白由来かと言うような研究もされています。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211124721006811#mmc2

 

この研究では26個のHLA-1ペプチドが報告されています。これらのペプチドはどうもスパイク蛋白よりはヌクレオカプシドとnsp6に多いようです。オミクロン株はnsp6にも変異が確認されていることから変異の場所によってはMHC クラスIへ乗ることが妨げられる可能性もあるかも知れません。しかしながら、このHLA-1ペプチド全てに変異が入ったらいざ知らず、今のところは細胞性免疫が全く回避されると言う可能性は少ないのではと考えます。そうであれば、ワクチンの効果も細胞性免疫という点で保たれ、効果が全くなくなるということはないのではないかと思いますが、どうなるでしょう。いや、スパイク蛋白内のHLA-1ペプチド全てに変異が入らなければ細胞性免疫が保たれるというのが正しいかも。

今後の報告が待たれるところです。

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