現在、ウイルス感染症で問題となっているのは、もちろんインフルエンザウイルスですが、他にも小児科の分野ではRSウイルスも流行が続いているようです。また、以前から問題となっている風疹の報告も続いているようです。

 

風疹は2019年11月24日までに2,266例の報告があり多くは、同様30～50代の男性です。風疹は、妊婦に初感染がおこると、先天性風疹症候群といい、児に障害をきたす事が知られています。そのため以前は女性に対して風疹の予防接種を行っておりました。そして、取り残された男性陣が、今になって抗体が無く、風疹に罹患する例が増えていると言うことです。

風疹は、3日はしかと呼ばれているように、小児期に罹患すれば軽くすむことも多いようですが、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血などの軽視できない合併症をおこすことがあります。ウイルス感染は特に大人になってからの初感染では重症化することも多いので注意が必要です。

 

現在、風疹の定期接種をうける機会がなかった1962年（昭和37年）4月2日から1979年（昭和54年）4月1日までの間に生まれた男性に対して、抗体検査をし、抗体価が低いかたを対象に、予防接種法に基づいた風疹の第5期定期接種が行なわれています。

　対象となる方は、市区町村により送付されるクーポン券を使用すれば、無料で抗体検査及び定期接種が受けられるようになります。クーポンが送られてきた方はこの機会に是非検査を受けると良いと思います。当院でも何人か抗体検査を行い、6割の方は予防接種を施行しました。

 

 

RSウイルスは小児科以外ではなかなかなじみの無いウイルスかも知れません。RSウイルスウイルスは子どもでも大人でも感染することがあり、症状は風邪の様な軽い症状から、呼吸困難などの重い症状を起こすことまで様々です。特に、新生児や6ヶ月以内の乳児、先天性心疾患や肺の基礎疾患があるお子さんに感染すると、時に肺炎や細気管支炎など、重篤な病態を引き起こすことがあり、注意が必要とされています。

 

RSウイルスは、まず小児科で主に問題となるウイルスかも知れません。しかし、個人的に思い入れがあるウイルスです。以前、自分の友人がRSウイルスに関して研究し、インターフェロン活性抑制分子との関連を研究して結果を出していました（Virology 391( 2), 162-170 2009）。彼のこの研究にヒントを得て、泌尿器科である自分は、腎癌とインターフェロン抑制分子の研究を開始し、こちらは指導する大学院生の学位論文とすることが出来ました（Cancer Sci, Jan;102(1):57-63. 2011）。彼のRSウイルスの研究を脇で見ていなければ、この腎癌の研究までは発展しなかったであろうと思っています。自分がRSウイルスの患者さんを見ることは無いでしょうが、個人的に思い出深いウイルスとなっています。

 

さて、インフルエンザウイルスは益々流行してきています。2019年第48週の定点当たり報告数は5.52（患者報告数27,393）となり、前週の定点当たり報告数3.11より増加しています。福島県については都道府県別では北海道(16.76)、青森県(15.48)、石川県(10.52)、富山県(10.42)、宮城県(9.23)についで、福島県は8.29と第6位となっています。ただ、福島県での分布を見ると流行は浜通が中心のようです。例年ピークは1月下旬から２月始め頃ですのでそれまで予防接種は済ませておくのが良いでしょう。