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アビガン、新型コロナウイルス感染に対し承認申請へ  

[2020.09.22]

シルバーウィークの4連休は、観光地などでの人手が増えているようで、観光地の経済状況には良い効果が生まれることと思います。ただ、感染予防対策は継続すべきです。この、4連休の影響で、新型コロナウイルス感染症患者がどの程度増えていくのかは、来週から10月上旬に結果が見えてくるでしょう。

 

さて、新型コロナウイルスの治療薬候補「アビガン」について、富士フイルム富山化学が近く国に製造販売の承認を申請する模様だと報道がありました。

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/5b123809f62ed7bb79792a509820bfa35d4834cb

 

アビガンはこれまで一部の病院で、患者の希望と医師らの判断で「観察研究」として使用されてきました。つまり、エビデンスはないが、使ってみても良いという感じでした。富士フイルム富山化学ではアビガンの臨床治験のために96人の参加を目標に3月末から6月末まで実施の予定でしたが、タイミング的に一時感染者が急減したため計画が遅れていましたが、第二波のために達成出来たものと思われます。

 

この富士フイルムの治験ですが、単盲検ランダム化多施設共同比較試験であり、非重篤な肺炎を合併したCOVID-19の患者で、RT-PCR検査で新型コロナウイルス陽性となり、胸部画像での肺病変、37.5℃以上の発熱のある入院患者を対象としているようです。この治験の主要評価項目は、体温、酸素飽和度、胸部画像所見の軽快、SARS-CoV-2が陰性化するまでの期間とのことです。これらの項目をアビガン投与群とプラセボ群で比較検討するようです。

 

https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/04/01/06763/

 

今回、承認申請を出した、もしくは出す予定であるのであれば、これら主要評価項目のどれか、もしくは全てに改善傾向が有意差をもって検出されたものと予想されます。有効性のみではなく安全性も検討されているはずです。

この治験では96例を対象としておりますが、この96と言う数字も、きちんと統計的に計算されて出た数字です。この96例のうち、アビガン投与群とプラセボ群を半々にしたのか、2:1にしたのかなどの割合は明らかとなっていません。しかし、この96という目標症例数には、被験者保護の観点から、被験者の数を最小限にしています。もちろん、こういった研究は数が増えれば増えるほど、差が出やすくなるのですが、その場合、たとえばアビガン投与群が非常に良好な結果であり、プラセボ群の予後が非常に悪かった場合など、症例数をむやみにふやすことは、プラセボ群に割り当てられる方も増えてしまうという事を意味します。加えて、研究にかかる費用やマンパワーも無駄使いになる可能性もあるわけです。そういうことを考えて被験者の数は最小限となる事が要求され、統計的な計算からから96と言う数字が出てきたと考えます。

 

これまで、新型コロナウイルスの治療に使用できる薬剤に関しては、「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」にレムデシベル、デキサメタゾンの2剤が保険適用ある薬剤として記載されています。アビガンは適用外使用の項に有ります。

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000670444.pdf

 

デキサメタゾンはステロイドであり、炎症を抑制する作用のあるもので、侵襲的人工呼吸管理を必要とした患者で最大の予後改善効果が認められていました。

レムデシベルはRNA 合成酵素阻害薬であり、アビガンと同様抗ウイルス薬です。レムデシベルが抗ウイルス薬として適用となっているとはいえ、この薬剤の投与に際しては、診療の手引きには「現時点では原則として,酸素飽和度 94%(室内気)以下,または酸素吸入を要する,または体外式膜型人工肺(ECMO)導入,または侵襲的人工呼吸器管理を要する重症患者を対象に投与を行うこと。」とされています。

つまり、今ある薬剤は、重症化した人が治療として使える薬剤として存在しているので、もちろんこれは、最前線の医療現場で治療にあたっている施設においては治療方針、選択肢がきちんと示されたと言う点で非常に有用なのですが、現状新型コロナウイルス感染症の患者さんは、重症患者より軽症・中等症の方が圧倒的に多く、またこの様な患者さんは重症化することを非常に心配されていることと思います。

そういう点から、今回のアビガンの治験は非重篤患者を対象としているため、軽症・中等症のかたに適用が広がれば、非常にインパクトがあるのではと考えます。

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