メニュー

オミクロン株の感染力と医療従事者4回目ワクチン

[2022.08.13]

オミクロン株BA5の感染が日本中を席巻し、医療現場も地域によっては大変なこととなっています。最近では日本の感染者数は他の先進国と比較しても高くなってます。COVID19による死亡はこれまで日本はかなり低率をキープしていましたが、最近では上昇傾向で注意が必要です。

(図上:感染者数、図下:死亡数)

 

このオミクロン株亜種における変異したスパイク蛋白の感染性、膜融合性などについての研究結果が先月のScienceに報告されています。

https://www.science.org/doi/10.1126/science.abq0203

 

新型コロナウイルス表面にはスパイク蛋白が存在し、このスパイク蛋白を利用して人の細胞に感染します。スパイク蛋白が感染する時に利用するのが、人の多くの細胞に発現しているACE2と言う蛋白です。ウイルス表面のスパイク蛋白が人の細胞上のACE2蛋白にくっつくところから感染が始まります。このスパイク蛋白に変異がおこると、スパイク蛋白の形が変わるため、ACE2蛋白へのくっつきやすさが変わります。つまり変異株では感染力が異なることがありと言うことです。

前述のScienceの論文では、オミクロン株亜種のスパイク蛋白とACE2蛋白との親和性を調べています。結果としてオミクロン株亜種のスパイク蛋白変化によって、BA.1、BA.2、BA.2.12.1、および BA.4/5 オミクロン亜系統が ACE2 結合親和性を上昇させましたが、中でもオミクロン株BA4/5 は元々の野生株に比較して4.2から6.1 倍、親和性が上昇していたとのことです。つまり、以前の株よりも細胞にくっつきやすい=感染しやすいと言うことです。

さらにこの論文ではスパイク蛋白による細胞融合性を調べています。ウイルスに感染した細胞は、細胞表面にスパイク蛋白を表出しつ、非感染細胞と融合し感染を広げたり、細胞死を誘導したりしますが、オミクロン株では野生株やデルタ株と比較して細胞融合は遅くなると言う結果でした。細胞融合が遅いと言うことは、感染後の広がりがゆっくりであることが予想されます。感染後は宿主の免疫能とウイルス感染の広がりとの競争となるため、感染の裕が血が遅ければ、これはつまり重症化することが少ないという今のBA5の特性にも合致します。

一方、これまでの報告通り、中和抗体による中和能は低下していましたが、ブースター接種によりかなりのレベルまで抗体価を上昇させることができるとのことです。ブースターワクチンはメモリーB細胞を呼び起こし抗体を産生させること、また交差反応性の細胞性免疫から重症化を抑制すると言う事が予想されます。

 

 

現在では高齢の方のみではなく、医療従事者に対する4回目接種が始まっています。当初4回目接種はより大きな感染防御能誘導が 観察されなかったこともあり、重症化予防の観点から高齢者、基礎疾患のある人から開始されました。ただ、最近、医療従事者に対する4回目接種を行うメリットがあるか、イスラエルでのオミクロン株感染ピーク時に、3回目接種済と4回目接種済の医療従事者におけるブレークスルー感染率が比較検討された論文が出ています。

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2794864

 

この論文では、29611 人のイスラエルの医療従事者 (平均年齢44歳) が、2021 年 8 月から 9 月の間に 3 回のワクチン接種を受け、うち5331 人 (18%) が 2022 年 1 月に 4 回目の接種を受けていました。これらの医療従事者の経過を見ると、。全体的なブレークスルー感染率は、4 回投与群で 5331 人中 368 人 (7%)、3 回投与群で 24280 人中 4802 人 (20%)でした。つまり、4回接種でブレークスルー感染率は低下したとのことです。論文では重大な医療スタッフ不足につながったOmicronバリアントの高い感染性を考慮すると、医療従事者の感染率を軽減させるために4回目のワクチン接種を検討する必要があるだろうと結論づけています。

現在、感染者の増加と共に、医療スタッフの感染やお子さんの感染によって濃厚接触となり出勤できない状況なども多くなってきているようで、このような医療状況を考えると高齢者接種と同時に医療従事者への4回目接種を早急に進めることが必要になっているようです。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME