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新型コロナ、イベルメクチン:医師主導治験へ 

[2020.05.07]

安倍晋三首相が、イベルメクチンについて、新型コロナウイルス感染症を対象に日本で「治験を開始していく予定」だと話しました。

イベルメクチンについては以前にもブログに書きましたが、新型コロナウイルスの増殖をin vitroで強く抑制したことが報告されていました。

そして、最近の臨床データ(International, multicenter, observational propensity-score matched case-controlled studyとなります)において、イベルメクチンが新型コロナウイルス患者の予後を有意に改善させているとの報告がでていました。

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3580524

 

この論文はユタ大学から発表されています。この研究は、これまで新型コロナウイルス感染症と診断された方を傾向スコア(プロペンシティスコア)propensity scoreによって、同じ傾向スコアの得点の患者同士を比較して、疑似的に観察研究のデータを無作為化割り付け試験のように解析したものです。

その結果、北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの169病院からの患者をイベルメクチン群、非イベルメクチン群それぞれ704例ずつを解析しています。この研究はランダム化されたものではありませんが、両群のデータを年齢、性別、人種、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喫煙歴、高血圧症の病歴、糖尿病、冠動脈疾患、その他の心臓病の有無が一致するように割り当てられています。

 

そして解析の結果ですが、人工呼吸器が必要な患者のうち、イベルメクチン群で死亡した患者7.3%であったのに対し、非投与群では21.3%でした。そしてイベルメクチンの方が全体の死亡率は有意に低かった(1.4%対8.5%)と報告されています。

P<0.001 この数字が重要です。有意に両群間で差がある事を示します。

 

この結果を見る限り新型コロナウイルスに対する薬剤として、期待できると言って良いと思われます。そのため安倍首相も治験開始に言及したのではと思います。

以前のブログで、in vitroの研究結果で、ウイルスを減少させる効果がある事を書きましたが、in vivo(マウスなど動物実験)の結果がありませんでした。基本的に動物実験で効果ないものを人に投与するわけにはいきません。しかし今回の結果では、動物実験を通り越して、人での結果のひとつであり、これは非常に重要です。

 

あとは確実なエビデンスと言う事になるのでしょう。つまり、プラセボ群と比較して有意にイベルメクチン群が、重症化率、死亡率が低いとか、PCR陽性率が下がるとか、人工呼吸器を使用するに至る確率が下がるとか、ランダム化比較試験で証明されるかどうかです。

実際にはそうなります。しかし、今回の感染症は急激に悪化する例も散見されます。それをふまえつつ、治験をどのように進めていくのか、注目したいと思います。

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