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日本性感染症学会・学術大会に参加してきました

[2019.12.01]

11月30日~12月1日にかけて、日本性感染症学会、第32回学術大会に参加してきました。

この学会は名称通りに性感染症に関する学会で、泌尿器科のみならず、皮膚科、産婦人科の先生方も多く参加される学会です。性感染症に関する演題ばかりで占められていますが、中でも梅毒に関するセッションは最も多く設けられていました。やはり今、増加傾向にある事からその関心の深さが反映されているものと思います。

この梅毒の場合、診断がついたらペニシリンを用いて治療しますが、今回のシンポジウムでも述べられていたように、今のところ梅毒とレポネーマのペニシリンに対する耐性は認めておらず第一選択で間違いありません。しかし、マクロライド系抗生物質に対しては耐性菌が拡大しているため注意が必要です。

 

梅毒のみならず、クラミジア感染症、淋菌感染症でも、どんな性感染症でも、相手・パートナーというものが存在します。今回はシンポジウムでも「性感染症パートナーへの対応」が取り上げられていました。この、性感染症の相手・パートナーに関する情報は、実際の診療でも重要で、受診された患者さんも答えにくい事はあるかも知れませんが、必ず聞くようにはしています。そして性感染症に罹患していたことが判明した場合、必ず相手・パートナーも受診し、検査するようにお話します。性感染症は昔から、いわゆるピンポン感染と表現されており、どちらか一方が治療していても、また感染し、こんど相手だけ治療してもまた自分がうつしてしまう、と言うように再感染を繰り返してしまうからです。

そこでパートナーへの告知が必要となってきますが、一般的に日本では、患者本人から伝えるのが一般的です。『性感染症に関する特定感染症予防指針』には「個人情報の保護に留意しつつ、該当患者を通じるなどの方法によりパートナーにも必要な情報提供などの支援を行うことで、検査を受診できるようにし、必要な場合には、医療に結びつけ、感染拡大の予防を図ることも重要である。」と記載されています。

 

実際、そねざき古林診療所の古林先生の発表で、クリニックでの相談パターンは

1.有症状で性感染症が心配

2.無症状だが、性感染症が心配

3.無症状だが、相手が性感染症(+責められている)

 

としており、これについては男性を中心に診ていますが自分のクリニックでも同じです。

 

このうち、

「1.有症状で性感染症が心配」、の場合は、症状が有り来院されるので、検査→治療とスムーズに進みやすい状態です。無論、パートナーに対する問診も行い、感染が確認された場合必ず、伝え、検査してもらう様に話します。中には、もう二度とその相手には会わないと言うかたもいらっしゃいますが・・。

 

「2.無症状だが、性感染症が心配」に関しては、大体はなにか心当たりがあって心配されるパターンが多いと思います。ただ、これも受診時期が重要で、昨晩の今日の朝、無症状での受診では、たとえば梅毒などは判定できません。しかし、受診して調べて見ようと言う考えを持つが重要で、近年では、女性が結婚前のブライダルチェックとして肝炎、梅毒、HIV、クラミジアなどの感染症を産婦人科で調べるかたもいらっしゃいます。性感染症においては、今無症状でも、感染がある場合もあるので、心配が有るときは検査しておこうという姿勢は大切だと思います。厚労省でも以前から、性感染症検査のポスターを作成し啓蒙しています。

 

 

「3.無症状だが、相手が性感染症(+責められている)」の場合、まず、性感染症罹患についてパートナーから言われ、受診。「お前のせいだ」と言われているパターンでしょうか。時に、性感染症に罹患した場合、誰のせいだ、と言う話になる場合が往々にしてあります。中には、自分は潔白だと証明してくれと受診されるかたもおります。しかし、通常のカップルの場合このような場合、どちらから感染したかというのはなかなか判定できません。下の図は昔アメリカのCDCで報告されたHIVの性感染ネットワークの図です。

 

図を見てわかるように、感染者には以前のパートナー(元カノ)がいますし、その元カノにも元彼がいました。もちろん感染者のパートナーにも元彼がいて・・・と考えていくと、元々も感染が誰から来たのかなど調べることなど非常に困難である事が容易に想像できます。性感染症に罹患してしまった場合、相手を責めるよりも、まずは治療に専念するのがよいでしょう。

性感染症に関しては予防に勝る手段はありません。そのような意味から、今回の学会でも性感染教育のシンポジウムが設けられており、多くのかたが参加していました。

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