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日本禁煙学会:たばこと新型コロナウイルス感染

[2020.11.15]

11月14日、15日は日本禁煙学会が郡山市のビッグパレットで開催されました。その会期中に行われた「日本禁煙学会学術総会福島大会における福島県医師会産業医研修会」に出席してきました。研修内容はたばこ・受動喫煙による健康被害、職場における受動喫煙対策ということでしたが、その中で少しだけ、喫煙と新型コロナウイルス感染についても触れられていました。

 

新型コロナウイルスは、自身のスパイク蛋白を使って、人の細胞上に有るACE2受容体を利用して感染すると言うことは以前にも書いたと思いますが、その受容体であるACE2は喫煙者におけるCOPD患者で多く発現しているという論文が紹介されていました。

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32269089/

 

ACE2受容体が多く発現していると言うことは、簡単に言うと、体内に侵入してきた新型コロナウイルスを捕まえやすい=感染しやすいと言う事です。ウイルスは細胞内に入らなければならないので、その前にまず細胞に吸着することが必要です。ウイルスをボールだとすると、そのキャッチャーミットの役割を果たすのがACE2受容体です。

もちろん、 ボールを投げるピッチャーがたくさんいたら、つまり感染者がウイルスを大量に放出していたら、キャッチャーはその多くのボールのうち、一個くらいはキャッチできるでしょう。逆に、投げるボールが少なくても、キャッチャーがたくさんいたら、誰かはボールとってしまうでしょう、という感じでしょうか・・。

 

ただ、これまでの疫学的な調査ですと、現在の喫煙と、新型コロナウイルス感染による重症化は相関がなかったと報告されています。

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32350106/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32192856/

 

中国で1099人のデーターを解析している報告では、非重症化と重症化例の比率は、非喫煙者で86.9%:77.9%で、喫煙者では11.8%:16.9%でした。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32109013/

 

少なくとも、受容体が多く発現していると言う事は、ウイルスを捕まえるキャッチャーがたくさんいるということなのですが、ACE2受容体は多くの細胞に発現している蛋白なので、喫煙で有意な差が出るかどうか判断は難しい所です。ただ、COPDの患者さんでは肺の機能が弱っていますので、万一、感染して重症化した場合非常に回復が難しくなりそうであることは予想されます。

 

以前より厚労省のリスク要因別死亡者数で、喫煙は堂々の1位です。

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17/backdata/02-08-04-01.html

 

福島医大の各務先生の発表にあった、喫煙による経済的損失は健康、施設、労働力損失の要因から年間4兆円以上とのことです。それに対して、たばこ税の税収は2兆円で、約半分しか補えていとのことです。ただ、最近は禁煙をしたいという患者さんは増えてきているように思われ、新型コロナウイルスがまだ収束に向かっていないいま、良い傾向だと考えます。

 

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