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福島県の新型コロナ増加「ゴジてれChu!」とアビガンについて

[2020.04.03]

今週は連続しての新型コロナウイルス感染者が確認されました。30日に福テレからインタビュー受けて、その翌日に2名、次いで2名、そしてまた2名と、これまでで合計8人の感染が確認されました。今週は火曜日、木曜日と「ゴジてれChu!」でお話させていただきました。

これまでの感染者の内訳をざっと見てみると、1例目2例目はクルーズ船とナイル川ツアーでおそらく海外から持ち込まれています。3例目だけ感染源わからず、4例目は東京へ行った後の発症(仙台から帰省した点も感染経路か否定はできず)、5例目は3例目の家族内感染、6例目は東京のライブハウス、7例目は6例目の家族内感染、8例目は東京滞在後発症となります。

ウイルスは人が持ち運ぶものであり、やはりこの時期首都圏に行くのは極力さけるべきでした。そうすれば、最低でもこのなかの3~4人は感染しなかった事になります。今の半分です。今は我慢の時です。

抗ウイルス薬が承認され、ワクチンが実用化されたら、必ずや快方に向かっていきます。それまで可能な限り感染者を増やさないことです。増えてしまってからでは一定の割合で重症化してしまうので遅いのです。

 

 

抗ウイルス薬として候補となっているファビピラビル(アビガン)の開発者である白木公康先生の緊急寄稿があります。

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14305

 

元々、富山化学で合成された化合物約3万化合物の中の1つがインフルエンザに活性を有していたことから開発が始まったようです。アビガンを投与すると伸長中のウイルスRNAに,アビガンを取り込んでしまいRNA合成がストップします。アビガンの阻害活性はインフルエンザウイルスだけでなく,ほとんどのRNAウイルスのRNA依存性RNA合成酵素に対して,伸長を停止する活性を有しています。

原稿には、致死性の高力価インフルエンザ感染モデルを用いた実験の驚くべき結果が示されています。致死性の高力価インフルエンザ感染モデルにおいて,よく臨床で使用されるタミフルでは3日ほどの延命は得られるのですが多くのマウスが死亡し生存率は10~20%程度でした。しかしアビガンは,すべてのマウスを生存させるという強い治療効果を示したとのことです。動物実験ですがタミフルで80%の死亡率が0%にまで改善するのです。

 

また、人における臨床的効果については中国、深圳と武漢の病院から報告されています。その結果を簡単に示しますと、

 

1)深圳では発症7日未満の患者に投与し、肺の線維化や瘢痕化に関わる胸部CT所見の変化を観察したところ、14日目にアビガン群は91.4%と有意に改善した(健常への回復ではないので,後遺症を残すが)とのことです。14日で悪化は35例中1例であったようです。

2)武漢では臨床的回復率が71.4%、解熱や咳緩和までを有意に短縮しています。武漢の対象症例は発症12日までのために肺炎が進行した患者がおり,やや成績が劣っているようには見えます。

 

これらをまとめて、白木先生は「COVID-19の発症6日までの早期治療は,肺炎による肺線維化や瘢痕化を最小限にして,死亡につながる肺炎重症化を阻止する。重要なことは,呼吸機能の予備能がない方々にいかに早期に対応するかであろう。」と述べています。

 

さらに、「抗ウイルス薬投与開始時期について日本感染症学会では「低酸素血症の発症」を必要条件としている。しかし,マウスのインフルエンザ肺炎では,この時期は抗ウイルス薬より,サイトカインと活性酸素による傷害を抗炎症薬や抗サイトカイン抗体(抗IL-6抗体)等により緩和する時期と思う。」と述べています。

 

ここで出ているこのIL-6は実は日本で発見されたサイトカインです。これを発見したのは大阪大学大学院生命機能研究科免疫制御学講座教授の岸本忠三先生です。そして岸本先生は、IL-6が炎症時の急性期反応などに重要な役割を担い、多発性骨髄腫や関節リウマチなどの疾病に深く関与することを見出し、国産初の抗体医薬品、ヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体(IL-6阻害薬)トシリズマブ(アクテムラ)の開発を牽引してきました。

このアクテムラですが、実は自分も大学で癌研究に応用させてもらいました。腎癌の研究ですが、腎癌は炎症性疾患の側面があって、これをアクテムラで抑制することで癌の治療抵抗性が回復するという研究をしていました。個人的に懐かしのアクテムラ。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28903416

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30167088

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23274199

 

そして実際アクテムラ開発の中外製薬では新型コロナウイルス肺炎を対象とする臨床試験の実施につき、ジェネンテックがFDAの承認を取得したと報告しています。早い。

https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200324093000_960.html

 

 

そうすると、全てうまくいったとして、現時点で考え得る最良のシナリオですが、

「発症早期に(6日まで)アビガン治療を開始することで,ウイルスの早期消失,咳嗽の軽減,肺炎の進行や重症化の阻止を図り,それにより死亡率が減少、重症例ではアクテムラを併用し救命を図る。平行して感染者を最小限に抑えつつ、ワクチンが実用化されたら一気に投与して沈静化させる。」

なんて言う道筋が見えてきませんか。そしてアビガンもアクテムラも日本発の薬剤です。このパンデミックを終息させる可能性を持っているのがこれら日本発の薬剤なのです。是非うまく事が運んで行って欲しいと思いますし、もし実現したら日本人として誇らしい気持ちになるでしょう。感染拡大のニュースを聞くたびに暗い気持ちになるのは皆同じだと思います。でもこういった日本や世界での動きを見ていると、一筋の光明が見えて来るように感じませんか。それまでの辛抱です。

 

 

 

ゴジてれChu!の放送のあと、私が昨年にウイルス学を講義していた臨床検査学科の卒業生達(現在大学に編入)が、テレビ画面をインスタにあげていました。「微笑ましい」って、何じゃそりゃ。

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