メニュー

尿路感染症

女性に多く発症する膀胱炎に代表される尿路感染症は、尿路(膀胱、尿道、腎など)に主に外界につながっている尿道から細菌が侵入し、感染、炎症を起こして、排尿時の痛み、頻尿、血尿、下腹部痛、残尿感など様々な症状をきたします。感染の部位が腎臓、前立腺の場合は発熱を伴うことが有ります。

 

日本泌尿器科学会「こんな症状があったら・排尿痛がある、排尿時に痛い」

日本泌尿器科学会「こんな症状があったら・排尿症状を伴う発熱がある」

膀胱炎

膀胱炎は一般的に女性、特に若い女性に多い尿路感染症で、頻尿、排尿時痛、残尿感などの症状をきたします。しかし、女性だけでなく、何らかの基礎疾患を有する場合、男性や高齢者でも膀胱炎になる事があります。

1)急性単純性膀胱炎:若い女性に多い、通常の膀胱炎で、通常、腸管内に常在する菌による感染が上行性に起こります

2)複雑性膀胱炎:尿路に疾患や漸進的な基礎疾患を有する場合は膀胱炎をおこすことがあります。この場合再発する場合も有ります。たとえが前立腺肥大症、前立腺がん、神経因性膀胱、膀胱結石のような尿路疾患や、糖尿病、ステロイド投与など免疫能の低下などでも起こりえます。

 

診断

症状:排尿時痛、頻尿、残尿感、下腹部不快感などの症状が有りますが、発熱は伴いません。

検尿:検尿所見、強拡大で白血球5/1視野以上認めます。

尿培養:複雑性膀胱炎の場合、大腸菌以外に様々な菌による感染が考えられるため、尿培養及び薬剤感受性を検査します。

 

治療

市販のお薬での治療は不十分であることが多く、抗生物質による治療が必要となります。通常の膀胱炎を起こす菌は大腸菌がほとんどですが、大腸菌以外の菌による尿路感染症や男性に発症する場合については、ほかの基礎疾患が隠れている場合があるので、さらなる検査が必要となる場合があります。膀胱炎は水分をあまり摂らなかったり、排尿を我慢することが多いような場合に発症しやすいです。常日頃から、水分をとるようにして、定期的に排尿することで、尿道への菌の侵入を防いで膀胱炎を予防できると考えられています。

起因菌は、閉経前の女性の膀胱炎において、70%はグラム陰性桿菌であり、65%は大腸菌でした。4%にはセフェム系抗性物質などに耐性を示すESBLでした。単純性膀胱炎において分離される大腸菌では90%以上にキノロン系抗生物質、セフェム系抗生物質に感受性があります。

 

治療法

1)レボフロキサシン500mg 1T 1X3日

2)セフジニル100mg 3T 3X5~7日

3)セフカペンーピボキシル100mg 3T 3X5~7日

 

 

腎盂腎炎

膀胱に感染した菌が、逆行性に腎盂まで到達し、腎に感染を起こした場合、膀胱炎と比較して高熱や腰背部痛が出現し、重症化することがあります。腎実質の感染症であることから、膀胱炎の場合と異なり、長期の抗生物質による治療が必要です。

1)急性単純性腎盂腎炎:細菌の尿路逆行性感染により起こります。膀胱炎同様、腸管内の細菌により起こります。

2)複雑性腎盂腎炎:尿路や全身性の基礎疾患がある場合の腎盂腎炎は抗生剤のみの治療では治癒が困難で、基礎疾患の治療をすることが重要です。基礎疾患としては尿路結石、悪性腫瘍、糖尿病、ステロイド投与などがあります。

小児の場合、膀胱の尿が腎に逆流する疾患を持っているときに発症する場合もあります。また、尿管結石を伴う腎盂腎炎の場合、腎にたまっている膿が排出できなくなり、重症化するときがあります。排膿を促すために尿管ステントの挿入や、場合によっては腎臓に直接穿刺して腎瘻を作って排膿しなければならない場合もあります。このように重症化する場合は原則入院が必要になります。

起因菌としては、膀胱炎に準じて大腸菌が主体で70%を占めています。そのほか、クレブシエラ、プロテウスなども起因菌となります。

自覚症状は、発熱、倦怠感などの全身症状に加えて排尿時痛などの排尿症状、腰背部痛、肋骨・脊椎角叩打痛

検査所見として膿尿、細菌尿に加えて、血液検査による白血球増多、CRP高値等の炎症所見を認めます。

 

治療法

1)レボフロキサシン500mg 1T 1X7~14日

2)セフジトレンピボキシル200mg 3T 3X7~14日

3)セフトリアキソン1g 点滴 1日1~2回

 

膀胱炎は短期の抗生剤で治癒します。これは抗生剤が腎で濃縮され高濃度の薬剤が直接膀胱に到達するからですが、腎盂腎炎の場合、膀胱炎と異なり、腎臓で濾過される前の濃度=血中濃度で作用するので、7~14日の長期治療が必要となることに注意が必要です。

 

 

急性前立腺炎

急性前立腺炎は前立腺の細菌感染によっておこります。発熱、排尿時痛、排尿困難などをきたすことがあります。治療は前立腺に移行性の高い抗生物質による治療となります。軽症の場合は内服で加療できることもあります。その場合、前立腺に移行性のよいニューキノロン系の抗生物質を使用します。重症の場合は入院し、抗生物質点滴による治療が必要となる場合があります。

慢性前立腺炎

慢性前立腺炎は、会陰部不快感、陰嚢部痛、尿道痛、下腹部不快感をきたす疾患ですが、急性前立腺炎と異なり、細菌感染ではないことがほとんどで発熱はきたしません。固い椅子に座っていると、会陰部に違和感が続く、時々会陰部痛が来たり、尿道や陰嚢部が痛くなるが、しばらくすると落ち着く、などのはっきりしない症状が長引くことが多いです。内服治療で症状緩和することが目標となりますが、症状が落ち着くまで時間がかかりますので、辛抱強く治療することが大切です。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME