高血圧について
高血圧症
血圧は心臓からの血液の拍出量と末梢血管抵抗の積により規定されており、高血圧とは、血圧が正常な範囲を超えて高い状態のことをいい、生活習慣病の一つとされています。至適血圧(120/80mmHg)を超えて血圧が高くなるほど、脳卒中や、虚血性心疾患、慢性腎臓病CKDなどが発症するリスクが高くなり、死亡率も上昇します。そのため予防的な処置として、血圧が高くない状態を保つことが必要となります。可能な限り130/80mmHgを目標に、コントロールするようにするのが良いと考えられます。
高血圧の原因
高血圧の原因は一般的には食生活や、喫煙、運動不足、ストレスによるものが多いといわれています。特に食生活の乱れによる肥満や過剰な飲酒などは高血圧を引き起こす要因となっていると言われています。塩分や脂肪、糖の摂りすぎ、野菜不足(カリウム・カルシウム)には注意が必要です。特に日本人は塩分を取り過ぎています。日本人の1日辺りの塩分摂取量は12.4gで世界平均の10.1g、アメリカの9.1gより多くなっています。
また、加齢にともなう血管の硬化(動脈硬化)によって、血液が流れにくくなることも原因の一つとされています。
高血圧の診断
診察室血圧測定と家庭血圧測定によって診断します。
診察室高血圧140/90mmHg以上を高血圧と診断しますが、測定環境により基準が異なりま
す。
(参考) 測定法による収縮期血圧と拡張期血圧の高血圧基準
・診察室血圧 ≥140 かつ/または ≥90
・家庭血圧 ≥135 かつ/または ≥85
・自由行動時下血圧
昼間 ≥135 かつ/または ≥85
夜間 ≥120 かつ/または ≥70
24時間 ≥130 かつ/または ≥80
家庭血圧は降圧薬治療判定に有用で、長期に測定することで季節性の変動も判定可能です。家庭血圧が測定できない事情がある場合は、自由行動時下血圧の情報で判断します。
治療
治療の目的は高血圧が持続することによる心血管病の発症・進展・再発を抑制して、死亡を減少させることにあります。
治療対象となる野は血圧140/90mmHg以上の全ての高血圧患者となります。
生活習慣の改善の指導や、禁煙の指導と、薬(降圧薬)による血圧コントロールを行っています。高血圧は生活習慣病の一つですから、普段の生活を見直すことから取り組んでいくことが最良の道の一つになります。
生活習慣の修正
1)減塩 6g/日未満
2)野菜・果物の接触的摂取
3)脂質 コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控え、魚油の積極的接種
4)減量 BMI<25を目標に
5)運動 有酸素運動を毎日30分以上を目標に。心血管病の無い方が対象
6)節酒 エタノール換算で 男性20~30ml/日以下、女性10~20ml/日以下
7)禁煙
リスクの有無によりますが、1~3ヶ月の生活習慣の是正で血圧140/90mmHg以上なら降圧薬を開始します。
降圧目標は140/90mmHb未満としますが、糖尿病、尿蛋白陽性の慢性腎臓病CKDの人は130/80未満とします。後期高齢者の場合はまずは150/90mmHg未満を目標としますが、可能であれば140/90mmHgを目指します。
薬物療法
Ca拮抗薬、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)、ACE阻害薬、利尿訳などが使用されます。
Ca拮抗薬はCaチャンネルの阻害によって血管平滑筋を弛緩させて末梢血管抵抗を減らして降圧作用を発揮します。糖代謝、脂質代謝、電解質代謝に影響を与えないために基礎疾患を有する高血圧の人にも有用です。また、脳・腎臓など臓器血流を改善する高価も有ります。
ARBはアンジオテンシンII受容体のサブタイプAT1受容体を阻害して、血管収縮、体液貯留、血管神経亢進作用を抑制します。
ACE阻害薬はレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(昇圧系)を阻害し、カリクレイン・キニン・プロスタグランジン系(降圧系)を増強します。
血圧160/100mmHg以上の場合2~3剤の併用となります。たとえばCa拮抗薬+ARB、
ARB+利尿剤、Ca拮抗薬+利尿剤が用いられ、2剤でコントロールができない場合は3剤併用、Ca拮抗薬+ARB+利尿剤が推奨されます。