日本性感染症学会第38回学術大会に参加して 〜DoxyPEP(ドキシサイクリン予防投与)〜
今日、名古屋の「ウインクあいち」で開催された日本性感染症学会第38回学術大会に参加してきました。
土曜日の外来終了後に新幹線で名古屋へ向かい、名古屋駅ホームの名物・きしめんを食べてから、翌日からに学会参加というスケジュールでした。
すべての演題を聴講できたわけではありませんが、今回特に印象に残ったのが、近年注目されているDoxyPEPに関するセッションです。
DoxyPEPとは?|性行為後に行う性感染症予防の考え方
DoxyPEPとは、
👉 リスクのある性行為の後に、ドキシサイクリン200mgを1回内服する
という、性感染症(STI)予防の方法です。
内服のポイントは以下の通りです。
- 性行為後できるだけ早く(理想は24時間以内)
- 遅くとも72時間以内に1回内服
- 24時間以内に内服できる量は200mgまで
- 毎日飲み続ける薬ではなく、「事後予防」として使う
重要なのは、「飲めば終わり」ではない点です。
DoxyPEPを行う場合は、
- 3〜6か月ごとの定期受診
- 梅毒・クラミジア・淋病などのSTI検査
- 副作用の確認
- 内服状況や性行動の変化の確認
- 継続の可否をその都度評価
が必要とされています。
DoxyPEPの有効性については、近年いくつかの研究が論文化されています。
今回学会でも取り上げられていた代表的な研究では、
- 過去1年以内に淋病・クラミジア・梅毒のいずれかに罹患したことがある
- STIリスクが高い男性・トランスジェンダー女性
を対象に、
- 性行為後にドキシサイクリン200mgを内服する群(DoxyPEP群)
- 通常の検査・治療のみを行う群(標準治療群)
に 2:1で無作為割付 しました。
3か月ごとに「新たなSTI感染があったか」を評価した結果、
HIV予防内服(PrEP)を行っている人では、
- DoxyPEP群:10.7%
- 標準治療群:31.9%
と、STI感染リスクが約3分の1(相対リスク0.34)に減少していました。
特に
✔ クラミジア
✔ 梅毒
では大きな予防効果が認められ、
淋菌についても一定の効果が示されていました。
参考文献(原著論文)
Luetkemeyer AF, et al.
Postexposure Doxycycline to Prevent Bacterial Sexually Transmitted Infections.
New England Journal of Medicine, 2023.
▶ PubMed(抄録・詳細はこちら)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37018493/
注意点|誰にでも勧められる方法ではない
一方で、学会では慎重な意見も強調されていました。
- 抗菌薬を予防目的で繰り返し使うことで
👉 淋菌やブドウ球菌などの耐性菌が増える可能性 - 長期的な影響はまだ十分に分かっていない
- 女性に関する有効性データが現時点では存在しない
そのため現状では、
STIリスクが非常に高い一部の人に対し、専門医の判断のもとで行う方法
と位置づけられており、
一般の方が自己判断で使用する薬ではありません。
日本での現状と今後
現時点では、日本ではDoxyPEPは保険診療として認められていません。
しかし、東京・大阪などの都市部では性感染症患者数が非常に多く、
今後、公衆衛生的な観点から議論されていく可能性はあると感じました。
学会に参加して感じたこと
今回は時間の都合で聴講できなかったセッションもありました。
演者の先生方と直接話せるのは、リアル学会ならではの大きなメリットですが、
一方でWeb配信があると、より多くの情報に触れられるのにとも感じました。
