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日本性感染症学会第38回学術大会に参加して 〜DoxyPEP(ドキシサイクリン予防投与)〜

[2025.12.21]

今日、名古屋の「ウインクあいち」で開催された日本性感染症学会第38回学術大会に参加してきました。
土曜日の外来終了後に新幹線で名古屋へ向かい、名古屋駅ホームの名物・きしめんを食べてから、翌日からに学会参加というスケジュールでした。

すべての演題を聴講できたわけではありませんが、今回特に印象に残ったのが、近年注目されているDoxyPEPに関するセッションです。

 

DoxyPEPとは?|性行為後に行う性感染症予防の考え方

DoxyPEPとは、
👉 リスクのある性行為の後に、ドキシサイクリン200mgを1回内服する
という、性感染症(STI)予防の方法です。

内服のポイントは以下の通りです。

  • 性行為後できるだけ早く(理想は24時間以内)
  • 遅くとも72時間以内に1回内服
  • 24時間以内に内服できる量は200mgまで
  • 毎日飲み続ける薬ではなく、「事後予防」として使う

重要なのは、「飲めば終わり」ではない点です。

DoxyPEPを行う場合は、

  • 3〜6か月ごとの定期受診
  • 梅毒・クラミジア・淋病などのSTI検査
  • 副作用の確認
  • 内服状況や性行動の変化の確認
  • 継続の可否をその都度評価

が必要とされています。

 

DoxyPEPの有効性については、近年いくつかの研究が論文化されています。
今回学会でも取り上げられていた代表的な研究では、

  • 過去1年以内に淋病・クラミジア・梅毒のいずれかに罹患したことがある
  • STIリスクが高い男性・トランスジェンダー女性

を対象に、

  • 性行為後にドキシサイクリン200mgを内服する群(DoxyPEP群)
  • 通常の検査・治療のみを行う群(標準治療群)

2:1で無作為割付 しました。

3か月ごとに「新たなSTI感染があったか」を評価した結果、
HIV予防内服(PrEP)を行っている人では、

  • DoxyPEP群:10.7
  • 標準治療群:31.9

と、STI感染リスクが約3分の1(相対リスク0.34)に減少していました。

特に
✔ クラミジア
✔ 梅毒

では大きな予防効果が認められ、

淋菌についても一定の効果が示されていました。

 

参考文献(原著論文)

Luetkemeyer AF, et al.
Postexposure Doxycycline to Prevent Bacterial Sexually Transmitted Infections.
New England Journal of Medicine, 2023.

▶ PubMed(抄録・詳細はこちら)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37018493/

 

注意点|誰にでも勧められる方法ではない

一方で、学会では慎重な意見も強調されていました。

  • 抗菌薬を予防目的で繰り返し使うことで
    👉 淋菌やブドウ球菌などの耐性菌が増える可能性
  • 長期的な影響はまだ十分に分かっていない
  • 女性に関する有効性データが現時点では存在しない

そのため現状では、

STIリスクが非常に高い一部の人に対し、専門医の判断のもとで行う方法

と位置づけられており、
一般の方が自己判断で使用する薬ではありません。

日本での現状と今後

現時点では、日本ではDoxyPEPは保険診療として認められていません。
しかし、東京・大阪などの都市部では性感染症患者数が非常に多く、
今後、公衆衛生的な観点から議論されていく可能性はあると感じました。

学会に参加して感じたこと

今回は時間の都合で聴講できなかったセッションもありました。
演者の先生方と直接話せるのは、リアル学会ならではの大きなメリットですが、
一方でWeb配信があると、より多くの情報に触れられるのにとも感じました。

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