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アストラゼネカ社の新型コロナウイルスワクチン 治験中断

[2020.09.09]

英国のアストラゼネカ社が英国オックスフォード大と共同開発している新型コロナウイルスのワクチンにおいて、臨床試験(治験)に参加したボランティアに深刻な副作用が疑われる事例が発生したことから、米国での治験を中断したと報告されました。これによって日本での治験も中断する方針とのことです。

 

これまで日本もアストラゼネカ社のワクチンも導入対象としていたと思いますが、治験が遅れることから、導入も遅れることが予想されます。ワクチン開発においては安全性の確立が重要です。ワクチンが広く普及するには、有用性と有害事象をきちんと評価して、有用性が明らかに勝っているときに導入されることとなるでしょう。

ただ、ワクチンでも何でも、人の体内に入る物は何らかの反応を起こすことが有るのは否定出来ません。免疫反応などが宿主に有害な反応を示す事をアレルギーといいます。多くの人が全く問題なく摂取出来る小麦粉やソバなどさえで強いアレルギー反応を起こす人がいるのですから、ワクチン接種においても、有害事象の率をあらかじめ調べておくことは必須で、治験とはそのために行われるものです。

 

以前、インフルエンザウイルスのワクチンの所でも書いたのですが、毎年接種するインフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスを鶏卵で増殖させて精製するので、卵アレルギーのある方は注意が必要です。しかしながら、ワクチン接種によって、インフルエンザウイルス感染による重症化が抑制され、死亡率も下がる事がわかっているので、このワクチンが(卵アレルギーの人にとっては特に)絶対安全とは言い切れなくても、日本中で接種出来るようになっていると考えて良いでしょう。

 

そういった意味で、新型コロナウイルスワクチンも同様に、有害事象は「全く無い」ということは無いと予想されるのですが、最終的に重症化を抑制できることが証明され、その有用性が確立されたら普及していくと思われます。ただ、今現在、重症化率は第一波の時より低いイメージで、有用性を証明する結果を出すのは、抗ウイルス薬と同様に難しくなってくるかも知れません。

 

今現在も多くのワクチン候補がありますが、アストラゼネカのワクチンはアデノウイルスを用いたワクチンです。これは、増殖能がないウイルスにコロナウイルスのスパイク蛋白の遺伝子を組み込み、そのウイルスをを投与し、人の細胞内に新型コロナウイルスのスパイク蛋白の遺伝子を導入し、人の細胞内でスパイク蛋白を作らせ、それに対する免疫反応を起こさせるものです。このほか大阪大学ではDNAワクチン、米国もモデルナ社はRNAワクチンであり、これらも細胞内でスパイク蛋白を作らせて、免疫反応を誘導するワクチンです。

 

https://www.nature.com/articles/s41565-020-0737-y.pdf

 

どこのワクチンが安全で有効性が高いのか、結果が出るにはまだかかるかも知れませんが、臨床応用が可能になれば日本中世界中に安心感が広がるのではと思います。

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