インフルエンザウイルス感染警報レベル継続、新型コロナ感染は微増
今年の師走は、新型コロナ感染が5類になったこともあり、忘年会なども行われるようになっているようです。週末などは街にも賑わいが戻ってきているように思われます。
ただ、インフルエンザウイルス感染に関して言えば、新型コロナ感染が5類になっての今年の冬は、昨年、一昨年の冬と全く状況が異なり、現時点で警報レベルの定点あたり30人を大きく超えています。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/605664.pdf
2021年、2022年はインフルエンザ感染はほとんど発生していない状態でしたが、今年は郡山市で言えば定点あたり50人を超えています。
インフルエンザウイルス感染は感染後発症が早く、しかも必ずと言って良いほど高熱などの症状が出ることから、感染がわかりやすいため逆に対策しやすい面も有るとおもわれます。感染してしまったら、抗ウイルス薬や解熱剤の内服、マスク着用、家での安静えを心がけ、回復を待つことです。新型コロナウイルス感染のように、無症状だったり、症状がなかったりする人がウイルスを排出しているとどうしても対策がとりにくいのは明らかです。
インフルエンザウイルス対策にはやはりワクチン接種も重要です。ワクチンは小児のインフルエンザ発症、重症化、入院を予防してくれますし、また妊婦さんでもその有効性が示されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36681572/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34691051/
2021年、2022年はbインフルエンザウイルスの発症がほとんど無かったことから、ワクチンを打ちそびれていた人もいるかも知れませんが、ワクチンは1年に一回は接種しておくことが良いようです。
加えて、新型コロナウイルス感染が微増しているのも少し気になります。現時点で接種可能なワクチンはXBB.1.5 対応ワクチンになります。以前使用されていたワクチンとは異なる株に対するワクチンですが、最近の論文ではこのワクチンで、様々な変異株に対する中和抗体が、XBB.1.5で44倍、XBB.1.16で32倍、EG.5.1で34倍、XBB.2.3で48倍、BA.2.86で17倍と増加することが報告されています。
https://www.thelancet.com/action/showPdf?pii=S1473-3099%2823%2900690-4
また、ワクチン接種後、武漢株 および XBB.1.5 のスパイク蛋白 応答 IFN-γ 単一陽性 CD4 T 細胞の頻度が有意に増加し(p=0.026、p<0.0001)、またXBB.1.5スパイク蛋白応答 CD8 T 細胞も有意な増加 (p=0.0225) が観察されましたと報告されています。
これらの結果から、XBB.1.5 を含む mRNA ワクチンが、現在流行している XBB サブバリアントおよび新たな変異株 BA.2.86 に対する防御力を高める可能性が最も高いことを示唆していると結論づけています。
NHKの「大奥」というドラマが面白いですが、その中で、天然痘に対するワクチンによる対策が描かれていました。天然痘は人のみに感染し、感染すれば必ず発症すると言うことでワクチンによる撲滅が可能であった病原体です。一方、インフルエンザウイルスは、鳥や豚などほ乳類が宿主となるウイルスであり、新型コロナウイルスも由来がヒト以外である可能性が高いことや症状が出にくい人がいる事など、これらのウイルスは撲滅させることが難しそうです。ワクチンで撲滅は不可能であっても、重症化、死亡を予防することが重要です。今年まだ接種していない人は、そろそろ接種を考えておくといいかもしれません。