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日本感染症学会学術講演会 COVID-19シンポジウム

[2020.04.19]

昨日、日本感染症学会において新型コロナウイルス感染症についてのシンポジウムが行われ、YouTubeで視聴しました。このシンポジウムは学会員のみではなく、非会員も視聴できるようになっており、様々な方も視聴された事と思います。3時間以上に及ぶ長丁場でしたが、知識の整理とともに、最近の動向など知ることが出来ました。以下に簡単に印象に残っている事を記載しておきたいと思います。

 

まず、東北大学の押谷先生による「クラスター解析からCOVID-19の疫学と対応策」です。福島県でもクラスターが発生しており油断できない状況ですが、押谷先生はじめクラスター解析班はこれまで、その解析を通じて様々な知見を得、我々に還元されています。

いまでは盛んに「3密」を避けるように言われていますが、これもクラスター解析から得られて知見です。

まずクラスター対策の考え方ですが、感染者・接触者・感染連鎖・クラスター連鎖が制御下におかれている限り大規模な地域流行にはつながらないと言うものが有ります。

 

スライドを拝借させていただきましたが、多くは咳、くしゃみではなく、換気量が増大する活動(大声を出す、歌う)複数の密着した接触がリスクとなっています。ライブハウスはこれが集まっていますね。通常の飛沫感染(患者が咳、くしゃみをして感染する)ではないとのことでした。

そして、そういったクラスターを形成する感染者は、むしろ咳などの症状がないものである事です。

ただ、排出ウイルス量は、若い人より、年齢が上がるほど多くなるようです。

この事から、各年齢層の感染拡大への寄与を次にようにまとめています。

 

・青壮年 大勢が集まるライブ、コンパなどへの参加者にウイルス排出者がいるとクラスター形成。しかも若者は移動が多い。

・中高年 地域での交流、接待、出張、商談などで感染を拡大させる

・高齢者 ウイルス排出量が多く、院内感染をきたす

 

以上を考えて、今の緊急事態宣言が出されているのだと理解できます。なるべく外出を控え、仕事はテレワークへ、移動を避け、病院では院内感染管理を徹底させる、という事です。

また、感染源が唾液になっている可能性も指摘されました。飲食店での感染の可能性に寄与していると考えられます。もちろん、咳くしゃみで飛んだ飛沫にもウイルスが含まれます。

 

人はしゃべるときにつばを飛ばしたりすることも多いです。そうすると、極端に言えば、もはや感染制御出来るまでは国民全体がマスクをして、唾液の飛散をコントロールすることも必要になって来るかもしれません。

 

 

防衛医大の川名先生は臨床症例の共有と言う事で、経験された症例提示をされていました。劇的に改善して行く方がいる一方、若くても進行を止められずに救命できない例などもあり、どのような人が重症化するのか、解明することが重要であると感じました。

症状としては、発熱はほぼ全ての患者にみられ、7割程度の人に乾性咳嗽、倦怠感が認められていました。川名先生はファビピラビル(アビガン)、シクレソニド吸入、ナファモスタット、メチルプレドニソロンなどの薬剤を使用していますが、今のところ特定の薬剤がよく効くという印象はないとおっしゃっていました。ただ、重症度と投与タイミングなどまだまだ検討の余地が有りますので、今後の治験の結果待ちと言うところです。

また、ウイルスが環境内でどの程度感染性を有するかとのことも、多くの人が興味を持つことだと思います。スライドに有るように、長いと数日もちますので、やはり多くの人が触るドアノブなどはこまめに消毒するのが良いと考えられます。

 

 

東京大学の武藤香織先生は「専門家の説明責任と市民の行動変容」という講演をされていました。その中で、感染症と倫理的法的社会的課題の例として、

・受け取りたい情報だけをうけとりたい

・デマは早く拡散し、正確だが複雑な説明は拡散しにくい

・事態がどんどん変化するため、情報が長持ちしない

・媒体の正確による得意分野と不得意分野

 

をあげていたのが印象的でした。

それをふまえて、現在「note」というアプリで「コロナ専門家」というページで、各界の

専門家が情報を発信している事を言っておりました。私は知らなかったのですが早速アクセスできるようにしておきました。メンバーは今村顕史先生、大曲貴夫先生、押谷仁先生、河岡義裕先生、賀来満夫先生など、そうそうたるメンバーです。信頼できる情報ですので、是非読んでみてください。

 

 

最後に藤田医科大学の土井先生で「臨床治験の進行状況と新知見」という講演でした。

この講演では主にステロイド吸入薬のシクレソニド観察研究とファビピラビル(アビガン)の観察研究についてお話されていました。

 

先ずシクレソニドですが、これはもともと気管支喘息に用いられる吸入ステロイド薬です。このシクレソニドが新型コロナウイルスのNPS15蛋白を阻害して抗増殖活性を持つと期待されています。今回の研究は観察研究で、シクレソニドを投与していない人との比較がされていないのですが、85例登録して患者さんの挿管、死亡率は~10%だったとのことです。現在、肺炎のないCOVID19患者への吸入を無作為で割り付けして、肺炎の発症割合を比較する研究が進行中とのことです。

 

 

次にファビピラビル(アビガン)です。アビガンは最近でもニュースでよく聞くようになりましたので、聞いたことがある人も多いと思います。元々は新型インフルエンザウイルス感染に用いられる様に開発された薬剤です。中国での研究の結果ロピナビル・リトナビルと言う薬剤と比較して有意に早期にウイルスが陰性化したとのことでした。

 

それをふまえて、アビガンの観察研究が進行中です。これまで男性262例、女性84例に投与され、データが集められています。結果、症状が改善したか、増悪したか、変わらなかったか、これは主治医の判断となっていますが、スライドの通りとなっています。軽症の人では投与7日で70%、14日で90%が改善とのことです。重症例では7日で41%の改善、14日で61%の改善です。またスライドお借りしました。

ただ、注意点としては、アビガン投与されていない人との比較ではない点です。アビガン投与していない人と比較して統計的に改善率が高いとなったら、有用と判断されます。とは言え、アビガン非投与群に入れるっていうのは人道的に出来ないかも知れません。

そこで今は、新型コロナウイルス感染者のうち、無症状、軽症者でもウイルスを排出するので、こういった方にアビガンを投与でウイルスを減らせるかという研究が進んでいます。これで有用であれば、軽症者、無症状者を早く見つけ(検査を増やし)、アビガンを投与することでウイルス排出を抑制してさらなるクラスター形成を抑制すると言う作戦も考えられるでしょう。

 

まだまだ、研究は半ばでいわゆる特効薬は開発されていませんが、マスク、手洗い、外出自粛で身を守る事が大切なのは変わりありません。

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