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腸内細菌と免疫「ためしてガッテン」

[2019.11.21]

先日、NHKの「ためしてガッテン」で腸内細菌の特集をしていました。

ざっくり言えば腸内細菌が長寿や癌予防に関与する可能性があり、いわゆる善玉菌を増やすための食事をしましょうと言うものでした。

人によっては、非常に清潔好きの人もいたりしますが、実は人間が無菌状態でいるのはお母さんの子宮の中にいるときだけで、生まれてきた瞬間から人間に菌が入り込んで、共生する様になります。そして、腸管内には非常に多くの菌が住み着くようになり、その腫類は1000種類以上、菌数としては100兆から1000兆住み着いていると推測されています。そして、それぞれ、人が腸管内に持っている腸内細菌の種類とその数には個人差がある事もわかっています。

 

我々の腸はものすごく多くの細菌と接しており、実は免疫の最前線となっている所です。そして、この腸には免疫細胞や抗体の6~7割が集中していると言われています。そして我々の免疫システムは、成長と共にこの腸内細菌に刺激されながら発達していくのです。実際、実験レベルでも、無菌マウスだと、ヘルパーT17 細胞が少なく、腸内細菌を投与すると数が増えることがわかっています。大阪大学の坂本志文教授が発見した制御性T細胞(Treg)の分化も、クロストリジウム属の細菌が誘導している事もわかっています。

NHKの「ためしてガッテン」で述べられていたように、大腸癌は腸内細菌と関連しており、大腸癌患者ではフソバクテリウム属が増えており、クロストリジウム減少していることもわかっています。

 

人の腸内細菌は次世代シークエンサーを用いて解析することが出来ます。細菌はリボームに存在する16sRNAの塩基配列で規定することが出来ます。ここを規定する塩基配列には、細菌ごとに配列が異なる領域と、共通する領域があり、共通する領域を利用すればどんな菌の塩基配列も解読できるようになります。実は、これをPCRとシーケンサーで解析するという内容は、以前福島の臨床検査学科の学生に遺伝子実習でやってもらっていました。

 

私が、大学病院にいたとき、専門外来で腎癌の患者さんに、オプジーボを投与していました。これはいわゆる癌免疫療法で、自身の細胞障害性細胞が、きちんと癌細胞を攻撃することが出来るようにする抗体療法でした。この治療法は、これまでの治療法に比較して非常に強力で、腫瘍が消失する患者さんもおり、その威力には驚いたものでした。しかし、全員がこのように劇的に効果があるのでは無く、効果が無い人ももちろんいます。

海外の研究では、このような癌免疫療法に用いる薬剤の効果も、腸内細菌によって変わると報告しています。たとえばPD-L1抗体にはビフィドバクテリウムが関与し(Science, 27 Nov2015 • vol 350 )、また、CTLA-4抗体の効果とはバクテロイデスとの関連が示唆されています。海外の人での研究では抗PD-1抗体の効果が高い人はAkkermansia muciniphila持つていると報告されました(Science. 2018 Jan 05;359(6371);91-97)。

この分野はまだまだ発展途上ですが、大変興味深い分野です。

 

ただ、この腸内細菌、食事内容や環境でもことなり、我々日本人も海外の人とは異なる菌を持っていたりします。違いを調べようとすると非常に奥深い分野ですが、「ためしてガッテン」で言っていたように、食物繊維をきちんと摂ることは賛成です。私はドイツに留学した頃から、毎日リンゴ+ヨーグルトを毎朝摂る事が習慣になっています。ドイツで買うリンゴはとても安く(6つで1ユーロちょっとでした!)、収入が無かった時の朝食としては最高でした。ドイツの友人もよくリンゴを食べていて、「ケイ、『1日1個のリンゴは医者いらず』って言うんだぜ!」といわれ、これって、世界共通なのか、と思い習慣化した訳です。このおかげかどうかは知りませんが、ドイツでの一人暮らしで、一度も風邪を引いたりはしませんでした。だから今もその習慣を続けているって訳です。

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