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アビガン:抗コロナウイルス薬としての可能性

[2020.02.25]

いまだに新型コロナウイルス感染症の発生が抑制される気配が感じられませんが、現在抗コロナウイルス薬としてアビガンという薬を用いる可能性が報道されていました。このアビガンは一般名ファビピラビルといい、新型インフルエンザに対して使用できる様に開発を進められていたようです。

 

通常インフルエンザに対する治療薬はタミフルをはじめとするノイラミニダーゼ阻害剤が一般的です。インフルエンザウイルスは細胞内で増殖したのち、ウイルス粒子を形成して細胞外へ放出されるとき、ノイラミニダーゼを用いて細胞外へ出て行きます。つまり、ノイラミニダーゼをタミフルなどで阻害してしまえば、インフルエンザウイルスは細胞の外に出て行くことが出来なくなり、拡散がストップしてしまいます。このノイラミニダーゼはインフルエンザ特有の蛋白ですので、タミフルはインフルエンザウイルスにしか効果がありません。

 

今回のコロナウイルスに使用されているアビガンは、抗インフルエンザ薬として開発された薬ですが、そのターゲットはノイラミニダーゼでは無く、RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤です。コロナウイルスもインフルエンザウイルスもRNAウイルスですが、RNAウイルスが増殖する際にはウイルスRNAを鋳型として、mRNAを作らなくてはいけません。mRNAはウイルス蛋白を作成するために必要となります。つまりRNAウイルスが増殖するためにこのRNA依存性RNAポリメラーゼの働きが必要となってきます。

 

アビガンは細胞内に取り込まれた後、細胞内酵素により代謝・変換され,ファビピラビル・リボフラノシル三リン酸体となって,RNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害するとされています。そして、このアビガンはin vitroや動物モデルで広範囲なRNAウイルスに効果を示すことがわかっています。

これは何故かというと、RNAウイルスが持つRNA依存性RNAポリメラーゼにはRNAウイルス間で広く保存される領域(つまりは共通する部品のようなもの)があるからとのことです。そのためインフルエンザウイルスだけでなく,出血熱の原因となるアレナウイルスなどの広範囲なRNAウイルスに対しても効果を示し,治療法の確立されていないRNAウイルス感染症の薬剤として期待されている薬剤となっています。そのため、アフリカでのエボラ出血熱に対してもこのアビガンが使用されていました。

 

なので、コロナウイルスに対して、抗インフルエンザ薬を使うと言う表現では、やや誤解を受けやすいように思います。抗RNAウイルス薬を使用するという表現が良いかも知れません。終息に向けて効果があることを期待したいと思います。

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