7月12日は人間ドックの日、高血圧の管理
7月12日は人間ドックの日でした。2019年5月31日に認定されているようです。HPによると最初に人間ドックを組織的にに行ったのは、1954年(昭和29年)7月12日、国立東京第一病院(現在の国立国際医療研究センター)で、その後聖路加国際病院をはじめ、全国の病院や施設で人間ドックが創設されたとのことです。
1~2年に一度は自己点検のため、ドックを受けるのはいいと思います。
最近よく患者さんに「高血圧の基準が変わりましたね」、と言われます。これは恐らく人間ドックの判定基準のことを指しているものと思われます。
2024年度の人間ドックでの血圧判定基準を見てみると
A:異常なし 129以下/84以下
B:軽度異常 130-139/85-89
C:要再検・生活改善 140-159/90-99
D:要精密検査・治療 160以上/100以上
となっています。これを見て高血圧の基準値が変わったと思われている方が出てきています。と言うより160以上/100以上から治療開始ですよね、私は気にしなくていいですよね?と言う意味で問い合わせてくるかたが出てきています。
しかしながら、日本高血圧学会によりますと高血圧症の診断の基準は「上の血圧が140以上、下の血圧が90以上」となっています。これは、これ以上の血圧だと脳血管障害のリスクが高くなるとのデーターがあるからです。なかでも脳卒中や心臓・腎臓の病気、糖尿病のかたは特に受診の必要がありと述べられています。そして上の血圧が160以上、下の血圧が100以上ならばすぐに医療機関を受診するようにしてください。
http://www.jpnsh.jp/topics/791.html
今回の血圧の基準値はやや誤解を招きやすい印象で、160以上/100以上出なければ治療の必要は無いと解釈するかたが出てきています。
しかしながら、圧治療は脳心血管病の発症・進展・再発による死亡や QOL の低下を抑制することが明らかとなっています。
実際、収縮期血圧(上の血圧) 10 mmHg または拡張期血圧(下の血圧) 5 mmHg の低下により,病気の発症リスクは,主要心血管イベントで約 20%,脳卒中で 30-40%,冠動脈疾患で約 20%,心不全で約 40%,全死亡で 10-15%,減少することが明らかにされています。
なので、血圧の管理は治療と言うより、特にリスクの高い方では将来のことを見据えたリスク管理と言う事となります。
最近の論文で50歳以上の心血管高リスク患者(心血管疾患既往、または主要な心血管リスク因子を2つ以上有し、上の血圧が130~180mmHg)を、診察室血圧が120mmHg未満を目標とする厳格降圧治療群、または140mmHg未満を目標とする標準降圧治療群に分けて比較検討した結果が述べられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38945140/
中国からのこの報告では2019年9月17日から2020年7月13日までの間に、平均年齢64.6歳、11,255人の参加者(糖尿病患者4,359人、脳卒中既往歴3,022人)が厳格降圧群(n=5,624)または標準降圧群(n=5,631)に割り付けられ、中央値3.4年追跡調査しています。その結果、主要アウトカム(心筋梗塞、血行再建術、心不全による入院、脳卒中、または心血管疾患による死亡)は厳格降圧群の 547 人 (9.7%)、標準降圧群の 623 人 (11.1%) に発生しました ハザード比 [HR] 0.88、95% CI 0.78-0.99、p=0.028であり、糖尿病の状態や脳卒中の既往歴にかかわらず、心血管リスクの高い高血圧患者では、収縮期血圧を 140 mm Hg 未満に抑える標準治療戦略と比較して 120 mm Hg 未満に抑える厳格治療戦略は、主要な血管イベントを予防することが報告されました。
この結果などから、リスクの高い方は特に、血圧はなるべく120以下の血圧にしておくことが良いリスク管理となると考えられます。