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レムデシベル承認へ、アビガン、アクテムラは

[2020.05.03]

新型コロナウイルス感染症の治療薬候補のレムデシビルについて、薬事承認となると発表されました。これについては海外での承認などを条件に審査の手続きを簡略化する「特例承認」を適用して、利用可能にすることとなるそうです。国内で最初の新型コロナ治療薬となるようです。

 

このレムデシビルは以前、in vitroでは、新型コロナウイルスにたいして強い抗ウイルス活性が認められたと報告されていました。

 

https://www.nature.com/articles/s41422-020-0282-0

 

ただ、先月新型コロナウイルスの治療薬候補レムデシビルの最初の無作為臨床試験(治験)が失敗に終わったことが明らかになり、レムデシビルに対する期待が低下しているということが記事になっていたのは記憶に新しいところです。

 

Lancetに掲載の中国からの論文では

“In this study of adult patients admitted to hospital for severe COVID-19, remdesivir was not associated with statistically significant clinical benefits.”

と記載されていました。さらに有害事象による被験薬の早期中止がプラセボ群に比べ、多かったとのことです。

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31022-9/fulltext?utm_campaign=tlcoronavirus20&utm_source=twitter&utm_medium=social

 

 

一方NIHからの報告では

“remdesivir was better than placebo from the perspective of the primary endpoint, time to recovery・・・”

“Recovery in this study was defined as being well enough for hospital discharge or returning to normal activity level.  ”

 

となってます。つまり、レムデシベルを使った方がプラセボと比較して回復が早いと言うことです。具体的には、「回復までの期間の中央値はプラセボを投与された患者は15日、レムデシビルを投与された患者では11日だった」となっています。

 

https://www.niaid.nih.gov/news-events/nih-clinical-trial-shows-remdesivir-accelerates-recovery-advanced-covid-19

 

中国からの論文は否定的なデーターだったのですが、NIHのデーターでは肯定的のようです。結局、米国ではレムデシベルが承認されますが、実際に日本での臨調治験を行うことなく、米国の結果を基に承認となります。米国は何らかの新薬を出すときに、多くの患者を集め、薬の臨床治験を迅速に進めてデーターを出してきます。このデーターを元に日本でも薬を使えるようになったため、日本でも早く同じ薬を使えるようになったのはメリットです。

 

実際、私が大学で担当していた進行性腎癌の治療外来でも、米国で承認された分子標的薬があまり時間差なく使えるようになっていました。迅速に海外の薬が使えるのは大きなメリットです。ただ直接疾患には関係ないとは言え、米国の薬を使うのですから、医療経済的には米国の製薬会社が潤ってるんだろうな、とは思っていました。そこで登場してきたのは、抗PD-1抗体オプジーボです。我が国の本庶佑先生がその分子機構を発見し、治療薬までになってのは本当に素晴らしいと思いました。日本はこのような研究を進めていかなければなりません。(以前もブログに書いたかも・・・)日本発の薬を開発していけるような環境作りを国は整えていかなければ、常に海外の薬を高いお金出して購入するだけになってしまうんじゃないかと心配です。

 

アビガンが使えるようになるには、やはりエビデンスが必要になってきます。実際にプラセボと比較して臨床データーが改善したか、ウイルスの検出が早期に消失したかなど、有意差を持って証明されないといけないです。しかし、日本の薬なので、米国でレムデシベルより優先的に治験に組み込む事は無いでしょう。なので、これは日本でやらないといけない問題かもしれません。実際には進んでいると思われますので、早く結果が出て欲しいと思っています。

 

もう一つ、以前ブログで触れたのですが、アクテムラ、抗IL-6R抗体です。

https://ishibashi-cl.jp/column/%e7%a6%8f%e5%b3%b6%e7%9c%8c%e3%81%ae%e6%96%b0%e5%9e%8b%e3%82%b3%e3%83%ad%e3%83%8a%e5%a2%97%e5%8a%a0%e3%80%8c%e3%82%b4%e3%82%b8%e3%81%a6%e3%82%8cchu%ef%bc%81%e3%80%8d%e3%81%a8%e3%82%a2%e3%83%93

 

個人的に思い入れのある薬品で、早く何らかのデーターが出ないかと思っていましたが、少しずつ情報が出てきています。

先日中国からIL-6の受容体阻害薬であるトシリズマブを、IL-6値が上昇している重症患者21人に投与して、めざましい症状改善効果が得られたと報告されました。アクテムラ投与でいわゆるサイトカインストームを抑制し、患者にアクテムラを投与したところ全員の体温が速やかに平熱に戻り、呼吸機能をはじめとする全ての症状が顕著に改善した。21人の患者のうち20人が、トシリズマブ投与から2週間以内に退院したとのことです。

 

“The temperature of all the patients returned to normal very quickly. The respiratory function and all other symptoms improved remarkably. Among these 21 patients, 20 patients have been recovered and discharged within 2 weeks after the tocilizumab therapy.”と記載があります。

 

https://translational-medicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12967-020-02339-3

 

さらに、大規模な臨床治験が進んでいるようで、すでに500人以上のCOVID-19 患者に投与されているとのことです(ChiCTR2000029765)。日本の本庶佑先生も「急性期にアビガン、重症肺炎時にトシリズマブを」と言っております。

 

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14406

 

そして日本でも自施設での結果をまとめているレポートが有ります。重症例9例において、アビガンなどとの併用ですが、効果判定では全例で有効となっています。

 

http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_casereport_200430_2.pdf

 

本来ならアビガンとレムデシベルの比較の治験も必要ですが、もし、優劣が付くなら有効である方を優先的に使用するのが良いと考えます。もし、優劣に差が無い場合は、どちらでも良いと言うことになるのですが、レムデシベルの利点は注射薬である事でしょう。重症患者で経口摂取が出来なくても投与が可能となります。その様な患者にはレムデシベル、経口摂取出来るならアビガンという使い分けもあり得ます。

いま、日本は緊急事態といえるでしょう。早期の治療法の確立が望まれます。

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