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新型コロナウイルスに有効な消毒・除菌:NITE

[2020.06.28]

先日、新型コロナウイルス対策として、独立行政法人製品評価技術基盤機構NITEによる、代替消毒手法の有効性の評価結果が公表されました。

これまで、アルコール製剤が有用である事は明らかではあったのですが、アルコール製剤の不足からの入手困難もあり、代替製品での有用生、一般家庭等で入手可能なもののうち一定の消毒効果が期待できる物の情報が望まれていました。そこで、経済産業省からNITEに代替消毒手法の有効性の評価依頼があり、少しずつ結果は公表されていましたが、先日は話題になっていた次亜塩素酸水の評価も含め公表されていました。

 

https://www.nite.go.jp/information/osirase20200626.html

 

手指消毒に加えて、環境消毒もすべてをアルコールで行うというのは経済的にも効率的にも非現実的です。実際、病院などの医療機関でも環境や物品などによって消毒薬は使い分けています。しかし、こういったことはこれまではあまり一般家庭では考えなくてもよかった事なのですが、今後は余計な心配を軽減するためにも、NITEの情報は活用されて良いのではと考えます。

 

市販されている製品の一部の新型コロナウイルスに対する効果は、北里研究所からも発表されていましたが、今回の最終的な報告では広範囲の製剤の情報が公開されました。

話題になった次亜塩素酸水も含め数々の物質に消毒効果が認められています。

 

https://www.nite.go.jp/data/000111301.pdf

 

 

結果から見れば、数多くの物質、製品が有効性有りと判断されています。今回の研究は国立感染症研究所、北里大学、帯広畜産大学、鳥取大学、QTECの各施設で行われていたようですが、各施設でのプロトコールが異なっており、施設間で結果が異なって出されているのも見受けられました。

たとえば、一部の界面活性剤は、国立感染症研究所の結果では99.999%の感染価の減少が見られている一方、北里研究所からは不活化効果無しと報告されているものも有りました。恐らくこれはプロトコールの違いで、国立感染症研究所はじめ、北里研究所以外の施設ではTCID50(50%細胞感染価法)を採用し、北里研究所ではqRT-PCR法を採用しているという違いがありました。

 

TCID50法は、通常のウイルスの不活化試験に行われている伝統的な手法です。対象と比較して、消毒液を作用させたウイルスがどのくらい細胞への感染率が減少するか、希釈法を用いてカウントします。

qRT-PCRは定量的RT-PCRで報道などでは一般的にPCRと言っていますが、このPCRとはDNAを検出する検査です。しかしながら、新型コロナウイルスはRNAウイルスなので、このRNAをDNAに変換する逆転写(RT)の一手間が必要になります。

 

国立感染症研究所、帯広畜産大学、鳥取大学、QTECにおける検証試験はTCID50算出法によりウイルスの感染価を何%以上減少させることができたかについて数値で発表されます。国立感染症研究者のプロトコールでは、50μℓあたり、2000万個のウイルスがどのくらい減るかを見ています。一方、北里大学における検証試験では、約10,000個のウイルスをほぼ完全に不活化(検出限界以下まで)させた場合に「不活化効果あり」として、効果あり・なしで判定されています。

 

プロトコールの違いは有り、また使用濃度が異なっているために施設間で結果が異なる物も有りますが、今回の結果では99.99%以上の感染価減少率を示したサンプル及び北里大学において不活化効果ありとされたサンプルを有効と判断されています。

私もウイルスの研究をしていた事がありますが、この様な研究は一朝一夕で出来ることでは決して無く、今回は緊急で行われた結果で有り、関係者の方々の努力には頭の下がる重いです。消毒に対するこういった情報はおそらくは皆さんが知りたかった事であると思います。

 

NITEの記事でも「消毒」と記載されていましたが、この消毒とは『物体や生体に、付着または含まれている病原性微生物を、死滅または除去させ、害のない程度まで減らしたり、あるいは感染力を失わせたりなどして、毒性を無力化させること』とされています。今回のNITEの結果は99.99%以上の感染価減少率を消毒効果ありとしていますが、逆に0.001%とかの感染の可能性があるのかと言う話になるかと言われれば、それはたとえば超大量のウイルスが付いている所の消毒効果が発表された消毒薬で十分なのかという話です。国立感染症研究所では2000万個というウイルスを使用していましたが、北里研究所では飛沫に含まれるウイルス粒子を10000個と仮定していました。大量のウイルス粒子を含む汚染物質は通常の環境に付着することは考えにくいことですので、あまり心配ないでしょう。

発表された製品群は、消毒効果があるので安心して環境消毒に使用可能です。不特定多数の人が触れる場所はこまめに消毒し、手洗いとマスク着用で感染拡大を阻止していきたいところです。

 

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