季節性インフルエンザワクチンと新型コロナワクチン
2022年10月1日より、季節性インフルエンザワクチンが始まっています。厚労省では10月1日からは原則、予防接種法に基づく定期接種対象者(65 歳以上の方等)の方々でインフルエンザワクチンの接種を希望される方への接種を進め、10 月26 日(月)以降は、医療従事者、65 歳未満の基礎疾患を有する方、妊婦、乳幼児(生後6 ヶ月以上)~小学校低学年(2年生)の方々で、インフルエンザワクチンの接種を希望される方に対して、接種が可能とされています。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000670611.pdf
今年のワクチン株はA型株
A/ビクトリア/1/2020(IVR-217)(H1N1)
A/ダーウィン/9/2021(SAN-010)(H3N2)
B型株
B/プーケット/3073/2013(山形系統)
B/オーストリア/1359417/2021(BVR-26)(ビクトリア系統)
と発表されています。インフルエンザワクチンは毎年4株が選択されていますが、この事からわかるようにRNAウイルスであるインフルエンザウイルスには多くの亜型が存在しています。我々はそれら全てに対して免疫を持っているとは限らないため、毎年流行が予想される株のワクチンを接種する事になってます。
今年は4回目の新型コロナウイルスワクチンも進められている途中ですが、インフルエンザワクチンとの同時接種も可能となっています。
現在のインフルエンザウイルス感染はニュースで触れることは今のところ無いようですが、令和 4 年 9 月 26 日から令和 4 年 10 月 2 日までで、定点での報告数は51例となっており、発生がないわけではないと言うことに気をつけた方が良いでしょう。
https://www.mhlw.go.jp/content/000997792.pdf
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンですが、新型コロナウイルスワクチンのmRNAワクチンと比較して、発熱・疼痛という副作用は低い印象です。患者さん達もインフルエンザワクチンは新型コロナウイルスワクチンのように躊躇することが少ないと思われます。
新型コロナウイルスに用いられているmRNAはもともと、人の細胞内にはいると激しい免疫反応を起こし、細胞は最終的に死んでしまいます。実はこういうことは、人の体で、ワクチン以外に時々起こるのですが、簡単に言うと、ウイルスの感染です。たとえばインフルエンザウイルスが人に感染した場合、インフルエンザウイルスのRNAは人の細胞内に入り込み、ウイルスRNAが細胞内にばらまかれる事となります。なので感染後に熱が出て、感染した喉の痛みがくるのです。インフルエンザウイルスではないですが、以前福島医大でウイルスの研究をしていたとき、友人とRNAウイルスであるRSウイルスと細胞内の免疫、TLRを介した認識後のインターフェロン活性についての研究をしていたことを思い出しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19595407/
このRNAが細胞内に入ると強い免疫反応が起こってしまうのを解決したのがmRNAワクチンの開発に関わったカタリン・カリコ氏とワイズマン氏です。彼女らはRNAのウリジンに化学修飾を加えて炎症反応を抑制する事に成功し、その結果現在のmRNAワクチンにつながっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16111635/
とはいえ、今のmRNAワクチンで痛みが強かったり発熱する人は、インフルエンザワクチンより多いのは確かだと思います。これが新型コロナウイルスワクチンを躊躇する理由であるならですが、今の緊急時に、早く作成して市場に出せるmRNAワクチンを使用する事はやむをえないとして、今後は組み替え蛋白を利用したワクチンに移行して予防接種を継続する。そこまでこれたらパンデミック克服がぐっと近づいてきそうです。