米食品医薬品局（FDA）は新型コロナウイルスのワクチン接種を年に1回、従来型と流行している変異型の2つに対応する2価ワクチンの投与を検討していると報道が有りました。

https://www.yomiuri.co.jp/world/20230124-OYT1T50096/

 

我々は、毎年冬にはインフルエンザのワクチンを撃ってますが、これと同様に毎年ワクチンを撃っておき免疫を維持、重症化予防を図っていこうと言うことだと思われます。今のところワクチンはオミクロン株と初期株との２価ワクチンを使用するようですが、現時点で問題となっているXBB1.5は今の免疫を回避する傾向があるので、今後どのようなワクチンになっていくかは注目です。

報道によると日本でも同様の方針をとるようです。現在、政府は新型コロナウイルスを感染症法で5類相当に位置つける方針ですが、これは季節性インフルエンザと同じ扱いになりますので、予防接種も集団接種はなくなり、個人で受けるようになるのではと考えます。

 

現在、新型コロナウイルスに対するワクチンはファイザー社やモデルナ社のｍRNAワクチンが主流となっています。しかしながらｍRNAワクチンはインフルエンザワクチンのような不活化ワクチンと比較して、発熱などの副反応が強い印象は否定出来ません。化学修飾しているとは言え、ｍRNAの性質上炎症反応をおこしやすいのだと考えます。このｍRNAからウイルス蛋白合成の過程を、工場でやってしまって、投与するのが組み替え蛋白のワクチンです。新型コロナワクチンでいえば、ノババックス（武田製薬）になります。

 

ノババックスも日本で使われていましたが、やはりファイザー社、モデルナ社のｍRNAワクチンに比較して発熱や疼痛などの副反応が少ないと報告されています。

https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20220808b.html

ワクチン接種者によっては、今後のｍRNAワクチンは控えた方が良さそうな人も時々いますので、ノババックスが主流になれば、毎年のワクチン接種も、撃っておいていいかなと思う人も増えるのではと思います。

 

唯一の懸念点は、ｍRNAワクチンよりは一手間かけるのでワクチンの製造に少し時間がかかるかも知れないことです。毎年ワクチンを打つにしても、新型コロナウイルスの株の変遷を見てわかるように、いろいろな変異株が出現してきます。なので、それを予測し、対応したワクチンを可及的早急に製造して行くシステムが必要になると考えられます。

 

現時点ではオミクロン対応ワクチンはｍRNAワクチンになりますので、まずは撃っておくと安心ですが、最近、ノババックスのオミクロン株に対するワクチンの効果の研究結果も出てきました。

https://www.nature.com/articles/s41598-023-27698-x#Sec2

 

この論文ではノババックスワクチンNVX-CoV2373 の 3 回目の投与後、Omicron BA.1および BA.4/BA.5 に対して高い力価が観察されたと報告されました。これはｍRNAワクチンの3回の投与と匹敵するとのことです。

研究では2 回の投与 (n = 29) および 3 回の投与 (n = 48) 後のワクチン接種血清による初期株、ベータ、オミクロン BA.1、およびオミクロン BA.4/BA.5 の中和をテストしています。

NVX-CoV2373の2回投与の14日後、平均力価（GMT）は初期株に対して最も高くGMTは1,401、次いでベータに対してGMTは173、、オミクロン BA.1に対して34、オミクロン BA.4/BA.5 に対してそれぞれ 47でした。それが3回投与でBA.1のGMTは 1,197、 そして BA.4/BA.5 にGMTが 582と大きく上昇していました。

また、2回投与のNVX-CoV2372ワクチンは、強力なメモリーCD4+およびCD8+ T細胞応答を誘発したことも報告されています。

この研究には、現在広く流行している XBB115 バリアントが含まれていませんので今後の課題となるでしょう。

 

しかしながら副反応の少ない組み替え蛋白ワクチンも強い免疫が誘導される事がわかりましたので、個人的意見ですが今後この組み替え型ワクチンが広まってくれたらと考えます。

ただ、実際今のｍRNAワクチンのバイアルは1バイアルあたりファイザーだと6人、接種者を集めないと無駄が生じてしまう作りです。ノババックスは10人分ですので、今後5類感染症に落とされたときに、医療経済的にはこういう量のワクチンを各医療機関で、有料で接種者を募るのは抵抗があるところかも知れません。インフルエンザワクチンの様にもっと小分けのバイアルができないかと思うところです。