感染者の全数把握見直し
先日、新型コロナ感染者の全数把握について、医療機関や保健所の負担を減らすため、都道府県の判断で詳しい報告の対象を高齢者など重症化リスクが高い人に限定できるようにするとしました。
感染症については感染症法に基づいて、全数把握する感染症と定点報告される感染症が定められています。(新型でない)コロナウイルス関連ですと、SARSやMERSが2類感染症として定められています。
これらの疾患の中には、実際にはほとんど日本では報告されない感染症も有りますが、結核や梅毒のように、多く報告される感染症もあります。ただ、多いと言っても感染者数は福島県において昨年度1年間で結核は131例、梅毒は104例でした。それに比較して新型コロナウイルス感染症は昨年1年で7700例を超しており、明らかに数が多くなっています。
確かにこれだけの数を毎日報告することとなると、多大な労力が必要となることは容易に想像できます。
通常のインフルエンザ感染症は定点報告となっており、全国約5,000カ所の内科・小児科医療機関からの報告で、流行期に入ったかどうか、定点あたりの報告数で判断されます。
新型コロナウイルス感染症をインフルエンザレベルまで落とすのはどうかという意見も見られましたが、まだ議論が必要です。
季節性インフルエンザ感染症と新型コロナウイルス感染症による死亡者数を年齢別に比較した報告が日本から日本臨床疫学会の機関誌「Annals of Clinical Epidemiology」出ています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ace/advpub/0/advpub_22016/_pdf/-char/en
この研究では節
性インフルエンザ感染症と比べた新型コロナウイルス感染症の人口 1,000 万人あたりの年間死亡者数は、0~9 歳では 30 人少なく、10~29 歳ではその差が不確実、30~69 歳では 20~439 人多く、70 歳以上では 1,951~9,661 人多いことなどを示しています。高齢者ではインフルエンザ感染症と比較して死亡者数が高くなっています。
インフルエンザウイルスに対するタミフルのような手軽に、確実に効果のある薬剤がまだ多くない状況である事を考えると、インフルエンザと新型コロナ感染症を全く同レベルと考えるにはまだ時間がかかりそうです。
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬としてはnirmatrelvir(ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッド®パック))がオミクロン株に対しても良好な結果を出しているようです。米国からの研究ではオミクロン株流行期に合計 109,254 人の患者のうち 3,902 人 がニルマトレルビルを投与され、 65 歳以上の患者では、Covid-19 による入院率は、未治療患者の 100,000 人/日あたり 58.9 件と比較し、治療を受けた患者の 100,000 人/日あたり 14.7 件と有意に低率でした。40~65歳までの比較的若い人では差は出ませんでしたが、高齢者ではニルマトレルビルを投与された患者は、そうでない患者よりも、Covid-19 による入院率と死亡率が有意に低かったとされています。
一方、メトホルミン、イベルメクチン、およびフルボキサミンはコロナウイルスに対する重症化を抑制できなかったことも報告されています。
これらの報告はあくまで重症化、低酸素や入院、死亡を抑制するかと言うことを主眼に置いています。それも重要ですが、やはりインフルエンザに対する抗ウイルス薬のように、誰でも内服したら、すっと熱が下がりすぐ楽になる、と言うような強力な抗ウイルス薬が手軽に入手できるような日が来ればいいなと思います。