新型コロナウイルスワクチン:接種できない人、など
世界では新型コロナウイルスワクチンの希望者が増えつつあるようです。一方日本では慎重論もまだあり、是非接種したいと言う人は17%で、米国の42%や英国の66%と比較して低い傾向にあるようです。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021013000394&g=int
確かに、今回のワクチンはRNAワクチンであり、非常に短い期間で臨床応用に至っているのでわからないことも多く、特に副反応について心配なのは理解できます。無論、長期的安全性は不明としか言いようがないので、これまでの情報で判断していくしかないでしょう。
前回も書いたNEJMのFAQは自分の勉強も兼ねて、読みつつ備えていきたいと思っています。
https://www.nejm.org/covid-vaccine/faq#Clinicians
前回の続きになります。
Q7.ファイザー社、モデルナ社のワクチンはどちらも同じと考えて良いですか
A7.基本的に、両者ともRNAワクチンで、作用機序、安全性、効果がほぼ同じです。違いは保存条件で、ファイザー社のワクチンは-70℃での輸送、保存が必要です。解凍後は5日以内に使用する必要があります。モデルナ社のワクチンは-20℃での輸送、冷蔵庫での保管で一ヶ月使用可能です。
日本でのワクチンは今のところファイザー社のワクチンが用いられる予定のため、-70℃で保管出来る所が必要です。解凍後、可及的早急に使用した方が良いので、予防接種システムをうまく設定して、無駄が出ないようにする事が必要です。
ファイザー社ワクチンは16歳以上、モデルナ社ワクチンは18歳以上で認可されている故、日本でもワクチンは16歳以上となるようです。
Q8. ファイザー社、モデルナ社のワクチンで、どういう人はどちらがいいとかは有りますか?
A8.両者の違いは、接種できる年齢のみで、他同じです。接種したら最初に使用したワクチンと同じ会社のワクチンを打つことが推奨されます。CDCでは万一、最初に撃った会社のワクチンが入手不可の時に他社のワクチンを使用可能としていますが、できるだけ避けて同じ会社のワクチンを打つようにとのことです。日本ではファイザー社のから始まりますが、当面一社のみのワクチンが使われるのではと考えます。
Q9.このワクチンの禁忌:接種してはいけない人は?
A9.これは大切なクエスチョンですね。このワクチンの禁忌は、ワクチン成分に対するアレルギー反応が明らかな人です。まずは、最初のワクチン投与で重症のアレルギー反応を起こした人は、二度目は撃たないようにします。またワクチンに含まれる成分、ポリエチレングリコールPEGや交差反応をおこすポリソルベートにアレルギーのある人は禁忌です。ポリソルベートは食品や化粧品に広く使用されている添加物のようです。
これらの物質でアナフィラキシーを起こすとわかっている人は接種を避けた方が良いでしょう。
アナフィラキシー以外に副反応として、接種部位の痛みが有ります。痛みがあんまりひどい人は、二回目は慎重に判断する様にしましょう。しかし、痛みが出たこと自体は禁忌ではないです、対処方としてはアセトアミノフェンやイブプロフェンなどの薬を使用することです。ただし、抗体産生に影響がある可能性が有るので、接種前の予防投与はさけるようにとのことです。
少ないと思いますが万一、コロナウイルスに対する抗体療法(血清療法)を受けた人は、ワクチン接種を90日遅らせるようにとのことです。
Q10.アレルギーの既往がある人は接種してはいけませんか?
A10.これも気になる方は多いと思います。アレルギーの病歴・他のワクチン、薬、蜂さされ、食品、花粉アレルギーかは関係なく、接種可能です。ただ、これらの方はワクチン接種後30分間経過観察する様にします。(15分でなく)
もちろん一回目のワクチンでアレルギー起こした人は2回目に行かない方がいいでしょう。
Q11.免疫不全の人はワクチンを受けてもいいですか?
A11.この場合、癌(化学療法受けていたり)、免疫不全疾患、移植を受けている人(免疫抑制剤を内服してたり)と言うような人をさしますが、これらの人は感染のハイリスクにあたるので、禁忌で無い限り接種する事が勧められます。ただ、これまでの研究ではこういった免疫状態が十分で無い方が含まれていないため、有効性がどの程度なのかわからないことも有ります。
生ワクチンではないので、ワクチンによる感染症の心配は無いです。ワクチンによって移植後の拒絶反応、自己免疫疾患のトリガーになるかは知られていませんが、他のワクチンではこういった影響はまれであることが知られています。
ただ、免疫不全だと十分に予防効果が得られないことも予想されるので、接種後もマスク、手洗い含めた感染予防策は重要です。
Q12.妊娠中、授乳中の人はワクチンはうてますか?
A12.発表されている治験には妊婦等は含まれていないので、データーは限られているのですが、CDCは妊娠中、授乳中の方もワクチン可能としています。RNAワクチンが妊婦、胎児、授乳中の乳児に影響がある論理的理由が見当たらず、また、モデルナ社の実験では妊娠ラットモデルで調べていますが影響がなかったことが報告されています。
妊娠は新型コロナウイルス感染重症化のリスクファクターである事は知らされるべきですし、ワクチンを接種する機会を与えるべきですが、場合によってはほとんど社会と接点を持つことを減らしている場合、接種しないことを選択する人もいるかも知れませんと書いてあります。
Q13.ワクチンの年齢制限はありますか?
A13.先ほども有りましたが、ファイザー社のワクチンは16歳以上、モデルナ社は18歳以上であり、現時点では小児には撃つべきではないとされています。年齢制限の上限はありません。高齢者は重症化のリスクが高いので予防接種が強く推奨されるべきとされています。
このNEJMの記事にも書いてあるのですが、ワクチンに関しては様々な理由から、避けたいと思う人はやはりどの国にも多くいるようです。信頼できる情報の提供が重要ではあるものの、十分ではない事もあると述べられています。そのようなとき、医療従事者が、「僕たちは接種しましたよ、うちの家族も接種しましたよ。」なんていうのが説得力があるかも、と書いてあります。この部分だけ、エビデンスとか無関係で人間味があふれる方法で、でも本当にそうかも知れないな~とか思いました。