新型コロナウイルスワクチンに向けて
福島県内では南会津での2件のクラスター発生から、感染者数が高くなっています。南会津は福島県内では、かなり田舎の方にあり、行くのも大変な所です。福島市や郡山市で発生が続いていても、感染者がずっと無かったのですが、ウイルスが持ち込まれてしまったと考えられ、感染者数が増加の一途です。感染したのは入所中のお年寄りが多いようで、頻回の手洗いや常時のマスク着用が難しい人が多いのではと予想されます。感染予防策がとりにくい施設は多くあると思われ、こういった施設で予防するにはやはりワクチンが良いのかも知れません。
郡山市ももちろん、今は各自治体でワクチン接種の準備を進められています。以前も書きましたが、ワクチンを受けるかどうかはもちろん強制では有りません。しかし、有効性は高いのは事実です。確かな情報を元に、各自が決定することが重要です。
New England Journal of MedicineにワクチンについてのFAQがまとめられていました。
https://www.nejm.org/covid-vaccine/faq#Clinicians
簡単にまとめておきます。
Q1.ワクチンはどのように効くのですか?
A1. 現在接種予定となっているファイザー社のワクチンと、モデルナ社のワクチンはいずれもRNAワクチンです。このRNAは新型コロナウイルスが人に感染するのに必要なスパイク蛋白の情報をコードしているmRNAとして働きます。私たちは細胞の中で様々な蛋白質を合成しながら生命を営んでいるのですが、この蛋白はmRNAの情報を元に合成されます。なので、コロナウイルスのスパイク蛋白のmRNAを元に私たちの細胞にスパイク蛋白を作らせてしまおうと言う物になります。ワクチンが注射されると、mRNAは注射部位の近くのマクロファージに取り込まれ、スパイクタンパク質を作らせます。その後、スパイクタンパク質がマクロファージの表面に現れ、免疫反応を誘発します。RNAというのは安定性が低く、すぐ分解されてしまいますので、ワクチンに使うRNAついては脂質でコーティングしてあります。
Q2.どのくらいワクチンは有効ですか?
A2.ファイザー社のもモデルナ社のワクチンも非常に有効です。ワクチンは、プラセボ注射と比較して、Covid-19を発症する可能性を約95%低下させました。ワクチンは発症、重症化を抑制します。95%のワクチン効果の結果は、2回目の投与後に得られますので米国疾病予防管理センター(CDC)と食品医薬品局(FDA)は、可能な限り2回投与スケジュールを進めることを推奨しています。
Q3.どのくらい効果が続きますか?
A3. Modernaワクチンの第1相試験のデータは、中和抗体が4か月近くは持続することを示しています。時間とともにわずかに低下するかも知れませんが、追加のデーター解析まちですね。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa2022483
Q4.変異株にワクチンは効きますか?
A4.現在の所、データーは限られていますが、ある予備実験ではいくつかの変異株にはより効果がある事も報告されています。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.01.07.425740v1
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.01.15.426911v1
これについては、まずスパイク蛋白への変異がどういう風におこってしまうかによると思われます。スパイク蛋白の変異の仕方によっては、抗体がつきにくくなる可能性も有りますし、場合によっては人への感染性が低くなる変異もあり得ます。スパイク蛋白のどの部位にどのような変異をおこすと、どのように性質が変化するのか、そういった地道な研究が必要になってくるかも知れません。
Q5.ワクチンは他の人へ感染を防ぐ事ができるか?
A5.新型コロナウイルス感染については無症状の人もいます。なので、ワクチンが無症状の感染も防ぐことができるかどうかわかるまでは、これからも感染予防策、つまり社会的距離、マスク、換気、および手洗いを継続する必要があります。
ただ。モデルナ社の研究結果からはワクチンは無症候性の感染を予防できる可能性を示していました。
Q6.ワクチンの安全性については?
A6.ワクチンは新しいので、短期的な安全性としての知見となります。
ワクチンは全体的に見て安全です。しかし、リスクが全くないと言う事はできません。(これはどのワクチンでも、薬でも同じです)ただ、このリスクは新型コロナウイルスで病気になるリスクよりもはるかに低いと考えられます。
最も一般的な副作用は投与後12〜24時間の注射部位の痛みです。約1%が痛みを「重い痛み」としました。倦怠感と頭痛も一般的な副作用です。高熱はあまりないようです。これらの副作用は通常、数日以内に解消し、アセトアミノフェンまたはイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬が有用です。若い人の方が免疫反応が強いからでしょうか、副作用は年配のかたよりも若いかたでより一般的であり、2回目の接種では1回目よりも多くの副作用を誘発します。
ギランバレー症候群や横断性脊髄炎の症例は今のところないとのことです。
アレルギー、特にアナフィラキシーは最近報告されています。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra2035343
これらの反応を引き起こす可能性が言われているのは、両方のワクチンに存在する化合物であるポリエチレングリコールPEGになります。そのため、ワクチンの投与には、ワクチン接種後15分間の観察期間が必要になっています。あらゆる種類の重度のアレルギー反応の病歴がある場合は30分間観察します。ただ、普通の人はPEGにアレルギー有るかどうかはわかりませんが、一般臨床ではたとえばC型肝炎や腎癌の患者さんにインターフェロン製剤で治療することが有りました。このインターフェロンにPEGを付加した物もありましたのでこういった薬剤にアレルギーがある人は注意です。
現在、ファイザーワクチンを10万回に1回、接種するとアナフィラキシーが発生するとされています。Modernaワクチンはさらに低いようです。この重度のアレルギー反応の割合は他のワクチン(たとえばインフルエンザワクチン)よりも高いですが、ペニシリンで報告されている割合(5000分の1と推定)よりも大幅に低くなっています。
このFAQでは“It’s critically important to emphasize that these allergic reactions are uncommon”と書かれています。
アレルギー反応は注意する必要がありますが、そのようなアレルギーが起きる可能性と、ワクチンを打たない場合の感染の可能性、そして重症化や後遺症の可能性を天秤にかけ、各自判断することとなります。
ただ、高齢者や高血圧・糖尿病など、リスクの有る方は、感染による重症化率が高いことも忘れてはいけません。