メニュー

梅毒研修会

[2023.05.25]

今日は郡山市医師会での梅毒研修会にてお話をしてきました。担当は梅毒総論でしたが、内容として梅毒の原因微生物である梅毒トレポネーマの特徴、梅毒の症状と経過、そして治療とfollowについてお話させていただきました。

 

梅毒の原因微生物である梅毒トレポネーマは通常の菌とは違う性質を持っています。

 

まず、梅毒トレポネーマは環境変化に非常に弱い菌であると言うことです。乾燥、温度変化、および周囲環境の酸素圧への耐性が非常に低く、環境変化ですぐに死滅してしまうと言うことです。なので、入浴時とかの環境からの感染、新型コロナウイルスのように飛沫による感染などは起こらず、性行為のように粘膜同士、粘膜-皮膚など濃厚な接触があったときに感染します。

 

また、梅毒トレポネーマは増殖速度が非常に遅いことも特徴です。もともと培養ができない菌ではあるのですが、菌の分裂は30時間かかるため、増えるのも非常に遅くなります。大腸菌などは20分に一回分裂しますので、通常翌日には菌は非常に増えています。なので普通の菌による感染であれば感染後数日以内に症状が出る事が多いのですが、梅毒トレポネーマによる感染では、感染後症状が出るまで平均3週間もかかります。

 

そして、梅毒トレポネーマの構造的な特徴としては、グラム陰性菌であれば持っている外膜を持っていないと言うことが上げられます。グラム陰性菌の外膜の構造にはリポ多糖LPSがありますが、このLPSは強い生物活性をもっています。たとえばLPSには血管拡張性があり、菌血症などでLPSが全身に広がると血圧低下を来たしショック状態となります。グラム陰性菌の外膜は別名エンドトキシンと言われますので、エンドトキシンショックと呼ばれます。そしてLPSは自然免疫のマクロファージの受容体TLR4に認識され炎症反応を誘導するのですが、梅毒トレポネーマにそのLPSが無いので、免疫反応の誘導が抑制されます。その結果、梅毒トレポネーマは放っておくと、体内に潜伏し、排除されないでいる事となります。さらに、2期梅毒のように全身に梅毒トレポネーマが散布されてもショック状態などになる事は無く、ひっそりと体内臓器を侵していく事となります。

 

そうなる前に、症状が出た時に治療しておくことが重要です。梅毒トレポネーマはペニシリン感受性が100%と言われますので、とにかく第一選択としては、アモキシシリン内服もしくはベンジルペニシリンベンザチン筋注となります。

感染し、症状が出ても、放っておくと症状が引っ込んでしまうのですが、決して治癒したわけではないので、必ず医療機関を受診して治療導入してしまうのが良いでしょう。

 

本日は福島医大泌尿器科での後輩のうちだ泌尿器腎クリニックの内田先生と、昔からお世話になっている長谷川皮膚科の長谷川先生と一緒の講演で、座長は岡崎バースクリニックの岡崎先生と星病院の亀岡先生でした、

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME