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淋菌感染症に新たな経口治療薬 ―「ゲポチダシン」第3相試験の成果

[2025.05.15]

淋菌感染症は、性感染症の一つで、Neisseria gonorrhoeae(淋菌)によって引き起こされます。主に性的接触を通じて感染し、尿道炎や膣炎、咽頭炎などの症状を引き起こします。日本でも若年層を中心に広がっています。男性の場合は排尿痛など強い症状が出ますが、女性では無症状で進行することもあり、気づかないうちに他人に感染させてしまうことがあり、放置すると骨盤内炎症性疾患や不妊症の原因となることがあります。

従来、淋菌感染症の治療には、セフトリアキソンやスペクチノマイシンが標準とされてきました。

淋菌感染症においての最大の課題は、「薬剤耐性(AMR)」です。近年全世界でこれらの抗生物質に対する耐性を持つ「スーパーバグ」と呼ばれる淋菌株が出現し、治療が困難になるケースが出てきています 。このような耐性菌の拡大は、世界的な公衆衛生上の課題となっており、新たな治療法の開発が急務とされています。

 

 

新たな治療薬「ゲポチダシン」

2025年4月に医学誌『The Lancet』に掲載された研究によると、新しい経口抗生物質「ゲポチダシン(gepotidacin)」が、非複雑性の尿路生殖器淋菌感染症に対して有効であることが示されました 。

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(25)00628-2/abstract

 

この研究は、アメリカと欧州の患者を対象に行われた**第3相無作為化非劣性試験(EAGLE-1試験)です。

🔬 研究デザイン:

  • 対象者数: 622人(18〜60歳、尿道・子宮頸部感染の患者)
  • 比較された治療法:
    • ゲポチダシン(経口 3000mgを12時間間隔で2回投与)
    • 標準治療:セフトリアキソン筋注(500mg)+アジスロマイシン経口(1000mg)

結果:

  • 治療成功率(尿路生殖器感染)
    • ゲポチダシン群:92.6%(270/292例)
    • 標準治療群:91.2%(263/288例)
      → 非劣性が証明されました。

ただ、咽頭感染に対する有効性はやや劣る傾向が見られました

ゲポチダシンは、、新規のDNAジャイレース阻害薬(トポイソメラーゼ II・IV 阻害)**であり、既存の抗生物質とは異なる作用機序を持っています。

このため、多くの既存抗菌薬に耐性を持つ菌株に対しても有効であると期待されています。
また、経口投与が可能な点は、外来診療における大きな武器になりそうです。

現時点で日本でも「スーパーバグ」が検出されつつあるようです。感染が判明したときはしっかりと治療することが重要です。

 

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