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赤べこと新型コロナウイルスワクチン

[2021.01.11]

今年はうし年ですね。先週、東北地方のNHKで赤べこが魔除けとして紹介されていました。赤べこは会津地方の郷土玩具で、昔から福島県内で親しまれてきたものですが、最近ではマツコデラックスさんが集めているとテレビで放映された事もあって、知名度は上がっているかも知れません。

番組ではまず、赤べこの赤色について、魔除けの色と紹介されていました。昔から日本にある神社ではこの赤=朱色が多く使われています。以前、何度か学会で京都に行ったときに訪れた貴船神社の石段に並ぶ灯籠はとても美しかった事を思い出します。また、伏見稲荷大社の千本鳥居も圧巻です。

そして、赤べこにある斑点について、これは疱瘡(天然痘)の斑点で、その昔日本でも天然痘の流行がおこり、多くの人が命を落としていく中、赤べこは病気から守ってくれるお守りとして、身代わりになってくれる物として描き入れたとされています。

 

もう少し加えるならば、この天然痘から人類を救ったのは、紛れもなく「うし」でした。天然痘は致死率が高いウイルス性疾患で、感染症法では1類感染症にされております。天然痘は日本において江戸時代に流行していますが、ここでワクチンがその力を発揮します。この天然痘に対するワクチンを1796年に発見したのはエドワードジェンナーですが、まさに「うし」から発見しています。当時、英国では、「うし」においても、天然痘と似た疾患「牛痘」が流行しました。うしの天然痘と考えていいでしょう。そして、うしの乳搾りをする女性が、しばしば牛痘に感染して、天然痘様の発疹が出たりしていたのですが、こういった牛痘に感染した女性は天然痘に罹患しないということが知られていました。そこでジェンナーは牛痘の発疹の浸出液・膿=ウイルスを含む液を8歳の少年に接種(自分の子供に接種したという美談もあるようですが、実際は使用人の子供に接種したそうです)し、その子供に今度は実際の天然痘の浸出液・膿を投与しても感染しなかったと言う事が、大きな発見となったわけです。

この天然痘ワクチン・牛痘は、日本にも輸入されています。江戸時代はウイルス保存などできない時代ですので、人から人へ植え次いで持ってきたと考えられます。ただ、日本へ輸入されたとは言え、普及するのには苦労が多かったようです。これについては福井藩における記録が多く残っているようです。福井藩では城下の医師である笠原白翁(本名は良策)が普及に尽力しています。白翁は君主である松平春嶽に「飢餓,戦争と疫病は国家の三大難事であり,中でも疫病は最も国力を弱めるものである。」と嘆願書を出したということです。ただ、この時代、ワクチン接種が疾病予防に有効と言う事が、どこまで一般の人々に認知されていたかはわかりませんが、牛痘に対する反対、抵抗する人達の抵抗は予想以上に多かったとされています。いつの時代もこういったことが起きるのは変わらないのでしょう。特に、この牛痘ワクチンは「うし」の膿から植え継いだ物なので、なんでそんな物を人間様に打ち付けるんだという感情もあったかも知れません。しかし笠原白翁は、これは牛痘ではなく、白翁がさずける「白神痘」であると、事業を進めていったとのことです。

「白神」=「ワクチン」です。

https://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/fukui/08/2018bulletin/yanagisawa.pdf

 

https://www.jrias.or.jp/books/pdf/201404_IRYOUSISEKI_MOROZUMI.pdf

 

現在WHOから天然痘根絶宣言が出されています。撲滅が可能であったのは、天然痘が人にしか感染しないことと、ワクチンが存在したことによります。

 

先日、ワクシニアウイルスベクターを用いた新型コロナウイルスワクチンの記事が出ていました。

https://www.igakuken.or.jp/topics/2021/0107.html

 

ワクシニアウイルスは天然痘のワクチンとして使われる物ですが、ワクチンという言葉はパスツールがラテン語の雌牛を意味するvacaから付けた名前で、ワクシニアはワクチンが由来です。このワクシニアウイルスにSARS-CoV-2遺伝子を導入した組換え生ワクチンによって中和抗体と細胞性免疫を強く誘導できたとのことです。生ワクチンの場合、インフルエンザワクチンの様な不活化ワクチンと比較して、実際に感染が起こったと免疫細胞に記憶させるため抗体のみならず細胞性免疫も誘導するので、より強力な免疫が誘導されます。

早急に臨床応用が可能になることを期待します。

 

歴史は繰り返すか、「うし」が世界を救ってくれるかも知れません。今年はやはり、赤べこを飾ろうと思います。

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