イソジンガーグル(ポピドンヨード)と新型コロナウイルス
昨日、吉村大阪府知事がポピドンヨードを含む、うがい薬(イソジンガーグルなど)を使用し、うがいをすると、唾液の中の新型コロナウイルスが減少して、他人にうつしにくくなる可能性があると発表しました。うがい薬でうがいを1日4回することで、唾液のPCR検査の陽性率が9%になり、うがいをしなかった患者は、陽性率が40%だったということです。この会見は、国内に大きな反響をおこしているようです。
さて、このポピドンヨードですが、以前もこのブログで触れたことがありまして、いわゆる消毒薬のひとつです。
ポピドンヨード自体は、コロナウイルスにも有効な消毒薬です。
NITEの研究結果で発表されたように、新型コロナウイルスに有効な消毒薬は非常にたくさん存在します。医学部や看護学部では習うのですが、ポピドンヨードはアルコール(エタノール)などと同じ、中水準レベルの消毒薬で、一般細菌の他、ウイルスに対しても有効です。ただ、数ある消毒薬のなかで、このポピドンヨードのみが人の粘膜にも使用できる薬剤となっています。
以前も、抗ウイルス作用の持つ薬剤でのうがいmouthwasheはウイルス量を減らして、肺炎を予防する可能性が指摘されていました。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/20002297.2020.1794363
そこで、今回の少数例での結果ですが、吉村大阪府知事が言っていたのは、「軽症の新型コロナウイルス患者の口腔内を消毒したら、重症化(おそらく肺炎への進行)を減らせる可能性がある」と言う事です。
確かに、口腔内ケアによって口腔内をきれいに保つことは肺炎(誤嚥性肺炎)の予防に寄与することは以前より知られています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28387268/
https://ci.nii.ac.jp/naid/10008507281
なので、口腔粘膜に使えるイソジンガーグルでうがいをして、ウイルス量をへらしていたら、何もしていない人よりは肺炎を起こしにくいだろうという仮説で研究を進めていると考えます。多くの症例でやってみないとどのような結果が出るかはわかりませんので、結果を待ちたいと思います。
ただ、ポピドンヨードも消毒薬であり、それは単に薬剤が触れた表面のウイルスは不活化する可能性はありますが、ウイルスは細胞内で増殖しますので、一時的にウイルスが減ってもウイルスが感染している細胞からウイルスはまた出てきます。
まあでも、お家も全く掃除せず、ゴミを捨てなかったら、段々とゴミ屋敷になって悲惨な状況になることもあると思われますが、まめに掃除してゴミを捨てていたらそこまではひどくならない、でもほこりやゴミが完全になくなるわけではない、だからまめに掃除しましょうみたいな感じでしょうか?わかりづらいか。
もちろんそのうちに、免疫が出来て次第にウイルスは排除されていくのですが、その前に重症化を有意差もって抑制できるかどうかと言う事です。ただ、消毒薬で口腔内を洗う訳ですからその時点のウイルス量は減りそうです。こういった事が必要となるのは、PCRで陽性になった無症状の方や軽症者が、療養しているときにうがいを行うのはいいのではと思われます。しかし、本当は、軽症のうちにたとえばアビガンのような抗ウイルス薬で細胞の内部からウイルスの増殖を抑えて重症化を防ぐ事が出来るというのが理想です。それがかなわない、もしくは候補薬が全くない様なときの代用としてうがいというのは、原始的ですが候補に挙がってくるかも知れないという程度でしょうか、いまのところ。
今回は吉村知事の発表のインパクトのせいか、また、日本中でうがい薬がなくなっているようです。新型コロナウイルス感染を予防する物ではないとも追加発表されましたが、情報の伝わり方に寄るかも知れないのですが、ポピドンヨードでうがいをすれば、カラオケボックスで歌いまくってもいいとか、みんながうがいしたらライブハウスで騒いでもいいとか、さらにはマスクをしなくてもいいとか、そういった誤解が生まれなければいいなと思います。