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ドキシサイクリン予防投与の性行為感染症に対する効果

[2025.03.05]

近年、梅毒感染者の増加が話題になっていましたが、梅毒、淋菌感染症、クラミジア感染症に代表される性行為感染症=STIは日本だけでなく、世界中で問題になっています。

海外ではこの性行為感染症の予防として、ドキシサイクリンの暴露後予防投与について検討されています。ドキシサイクリンはペニシリンなどの細胞壁合成阻害作用のベータラクタム系とは異なり、タンパク合成阻害作用をもつテトラサイクリン系の抗生物質です。

 

海外でのランダム化比較試験において男性同性愛者=MSMにおいてSTIの予防にドキシサイクリン曝露後予防の高い有効性が実証され、クラミジア感染および梅毒が70%~85%減少、淋菌感染が約50%減少したと報告されています。ただ通常のいわゆるシスジェンダーにおいてはクラミジアおよび淋菌感染の減少には寄与しなかったとのことです。

女性シスジェンダーについての研究は2023年に論文化されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38118022/

 

この研究では18 ~ 30 歳のケニア人女性を対象に、ドキシサイクリン予防投与を、コンドームなしの性行為後 72 時間以内に 200 mg を服用したものと標準治療を比較する無作為化オープンラベル試験です。合計 449 人の参加者のうち 224 名がドキシサイクリン群に、225 名が標準治療群に割り当てられ、 12 か月間にわたり四半期ごとに追跡調査されました。そのうち合計 109 人に性感染症が発生しました。結果としてドキシサイクリン群で 50 件 [100 人年あたり 25.1 件]、標準治療群で 59 件 [100 人年あたり 29.0 件])であり、発生率に群間の有意差は認められなかったとのことです。結果としてシスジェンダー女性には予防効果なしとの結論でした。

 

米国においても大きな研究がされていて先日論文化されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39761052/

 

この研究ではカリフォルニア州サンフランシスコのMSM およびトランスジェンダー女性におけるクラミジア、淋病、および早期梅毒の症例報告と市全体の予防投与 ガイドラインの発表との関連を評価しています。

サンフランシスコの性感染症症例において、2022 年 10 月に市全体の 予防投与ガイドラインが発表される前 (2021 年 7 月~2022 年 10 月) と発表後 (2022 年 11 月~2023 年 11 月) の月ごとのクラミジア、淋病、早期梅毒症例を測定しています。分析期間中にサンフランシスコの MSM およびトランスジェンダー女性の間で報告されたすべてのクラミジア、淋病、早期梅毒症例を対象として、 2023 年 11 月から 2024 年 7 月まで分析されました。

その結果結果分析期間中、全体では、MSM およびトランスジェンダー女性の間で、クラミジア症例が 6,694 件、淋病症例が 9,603 件、早期梅毒症例が 2,121 件でありそのうち予防投与実施後、MSM およびトランスジェンダー女性の STI 症例は、クラミジアと早期梅毒は減少したとのことです。 2023 年 11 月の 13 か月後期間の終了までに、クラミジアと早期梅毒の症例数は、予測症例数と比較してそれぞれ -49.64%  と -51.39%の減少でした。ただ、淋病症例数は比較して大幅に増加したとのことです。ドキシサイクリンの投与はSTIの流行に大きな影響があるかもしれません。

このドキシサイクリンはペニシリンアレルギーの人に梅毒治療として用いられることがありますが、妊婦さんには禁忌です。しかも、比較試験はありませんが、梅毒に対してドキシサイクリンは、ペニシリンよりは治癒達率が低くなる報告がありますので、梅毒であれば可能な限りペニシリンがよいと考えられます。

まあ、それよりも感染予防を徹底しておくほうが最も安全であることは間違いないと思われます。

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