帯状疱疹とコロナワクチン
先日はコロナウイルス4回目についての発表が有りましたが、最近では1回目2回目の時と比較して3回目ワクチンの伸びは鈍いように思います。このワクチンはおそらく3回で最も効果が高いようで、4回目ワクチンは中和抗体の濃度を少し長持ちさせる効果はありますが、3回目後以上の濃度にはならないようです。まずは3回目接種を終わらせておくことは重要かと思います。
ワクチン接種が進んで来た頃から、当院では帯状疱疹の患者さんが増えてきたように感じています。これは、全国でも同じように感じている先生も多いようです。
実際、イスラエルにおけるコロナワクチンにおける88万人解析の報告が有りますが、やはりワクチン接種により帯状疱疹の発症率が上がることが報告されています。
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2110475?url_ver=Z39.88-2003
帯状疱疹ウイルスはヘルペスウイルス属のウイルスのひとつで、DNAウイルスです。ヘルペスウイルス属には、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルスなどがあります。自分が大学で研究していたときは、ヘルペスウイルス属のサイトメガロウイルスと腎移植の研究をしていました。サイトメガロウイルスはDNAウイルスなので、コロナウイルスより変異は入りにくいのですが、それでもサブタイプは存在しており、研究の中では中和抗体の種類による感染症の発症率の違いや、細胞性免疫の影響について考察することができ、その経験は今でも非常に役に立っています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17554702/
コロナワクチン後の帯状疱疹発症は日本でも、他の国でも報告されています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/132/3/132_487/_article/-char/ja/
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jocd.14035
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8662047/
帯状疱疹は、もともと小さい頃感染した、水痘、つまり水ぼうそうですが、そのときのウイルスDNAが神経節に残っており、免疫状態が下がったときにウイルス粒子を作り始め、神経に沿って痛みを伴う発疹を形成します。このウイルスDNAが神経細胞内にのこるメカニズムは不明ですが、こういうウイルスの感染は潜伏感染と呼ばれるもので、ウイルスの種類によってはこういう特殊な感染様式をとる事があります。帯状疱疹はやはり高齢者に多く発症しますが、他にも免疫状態が低下する状況、たとえば極度の疲労や女性であれば生理などが契機となって発症する事があります。
今回の報告では、コロナワクチンが契機となって帯状疱疹が発症するというものでした。実際に、ワクチンと帯状疱疹発症のメカニズムはわかっていませんが、やはり免疫調整の変化から潜伏する水痘帯状疱疹ウイルスの活性化を引き起こしている可能性が示唆されています。
実際は、帯状疱疹はよくある疾患ですので、ワクチンとどのような関わりがあるか、本当に関連性があるかは今後の研究待ちにはなりますが、ウイルスや免疫の研究は非常に面白くやりがいのある分野だったなと思い起こしていました。